研究実績の概要 |
がん細胞などのシグナル伝達に深く関わる『微小管』は,2 つの球状タンパク質であるα-チューブリンとβ-チューブリンのヘテロダイマーが重合することによって構成されている.微小管のダイナミクスを阻害すると,がん細胞等の異常細胞の増殖を抑制できることから,α,β-チューブリン阻害剤は抗がん剤として開発されてきた.この微小管形成におけるα,β-チューブリンの重合の起点となっているのがγ-チューブリンである.最近γ-チューブリンは,主に脳に発現する悪性腫瘍において過剰発現していることが報告された.従ってγ-チューブリンに特異的に作用する薬剤は,有効な抗がん剤リード化合物として期待できる. これまでに代表者は,α,β-チューブリンの重合阻害活性を示す天然物であるグラジオビアニンAをリード化合物として開発したガタスタチン(O7-ベンジルグラジオビアニンA)は,α,β-チューブリンには全く作用せず,γ-チューブリンに対して特異的に作用することを明らかにし,世界初のγ-チューブリン特異的阻害剤として報告した.本研究課題ではさらなる活性の向上を目指し,ガタスタチンをリード化合物とした構造活性相関研究を検討した.平成29年度は,これまで合成経路の都合上,手つかずであったO6位を改変できる合成経路を確立した.合成したO6-改変ガタスタチンの生物活性を評価した結果,α,β-チューブリンには作用せず,ガタスタチンを凌ぐ細胞毒性とγ-チューブリン特異的阻害活性を示すことが明らかになった(特許申請準備中).
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