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2018 年度 実施状況報告書

微小管形成の起点となるγ-チューブリン複合体の特異的阻害剤の創製

研究課題

研究課題/領域番号 17K01949
研究機関岡山大学

研究代表者

早川 一郎  岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20375413)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードγ-チューブリン / 分子設計 / 構造活性相関
研究実績の概要

がん細胞などのシグナル伝達に深く関わる『微小管』は,2 つの球状タンパク質であるα-チューブリンとβ-チューブリンのヘテロダイマーが重合することによって構成されている.微小管のダイナミクスを阻害すると,がん細胞等の異常細胞の増殖を抑制できることから,α,β-チューブリン阻害剤は,抗がん剤として開発されてきた.この微小管形成におけるα,β-チューブリンの重合の起点となっているのがγ-チューブリンである.従ってγ-チューブリンに特異的に作用する薬剤は,有効な抗がん剤リード化合物として期待できる.これまでに代表者は,α,β-チューブリンの重合阻害活性を示す天然物であるグラジオビアニンAをリード化合物として開発したガタスタチンは,α,β-チューブリンには全く作用せず,γ-チューブリンに対して特異的に作用することを明らかにし,世界初のγ-チューブリン特異的阻害剤として報告している.一方,昨年開発したO6位にプロパルギル基,ベンジル基を導入したガタスタチンアナログは,α,β-チューブリンには作用せず,ガタスタチンを凌ぐ細胞毒性とγ-チューブリン特異的阻害活性を示すことが明らかになった. そこで今年度は,連携研究者の臼井と協力して,より詳細な活性発現機構の解析を行った.間期細胞形態を観察したところ,O6改変ガタスタチンアナログは微小管形態には大きな影響を及ぼさないことがわかった.一方,細胞分裂期細胞形態を観察した結果,活発に中心体からの微小管伸長を起こす細胞分裂期で紡錘体形態異常を引き起こし,中心体からの微小管伸長(核形成)を阻害していることが明らかとなった.この結果はガタスタチンの活性発現機構と類似していることから,O6改変ガタスタチンアナログは,ガタスタチンより強力なγ-tubulin特異的阻害剤であることが明らかになり,この結果を特許として出願した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記のように,昨年設計した類縁体の詳細な活性発現機構を解析し,リード化合物であるガタスタチンよりも強力なγ-チューブリン特異的阻害剤であることを明らかにした.またガタスタチンの溶解性改善を目的に合成を進めているN-アセチルコルヒノールの合成研究も順調に進んでおり,鍵反応である分子内Mannich反応前駆体の合成経路の開発を大きく進展させた.

今後の研究の推進方策

現在,ガタスタチンと2種類のO6-改変ガタスタチンアナログについては,さらに詳細な活性発現機構の解析を進めている.平成31年度前半に,どの化合物を次のステージに進めていくか絞り込む.絞り込んだ化合物について,動物実験を行うために大量合成を実施する.また,N-アセチルコルヒノールをリード化合物とした天然物アナログを設計・合成するため,N-アセチルコルヒノールの合成経路の開発も引き続き進めていく.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Structure-activity relationship study of gatastatin based on the Topliss tree approach2019

    • 著者名/発表者名
      Hayakawa Ichiro、Shida Shuya、Chinen Takumi、Usui Takeo、Kigoshi Hideo
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 99 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.3987/COM-18-S(F)16

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of a novel inducer of protein-protein interactions based on aplyronine A2018

    • 著者名/発表者名
      Ohyoshi Takayuki、Takano Atsuhiro、Namiki Mayu、Ogura Tomotaka、Miyazaki Yuto、Ebihara Yuta、Takeno Koichi、Hayakawa Ichiro、Kigoshi Hideo
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 54 ページ: 9537~9540

    • DOI

      10.1039/C8CC04613A

    • 査読あり
  • [学会発表] アルテミシジン類の合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      永易杏菜・早川一郎・坂倉彰
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会(2018)
  • [学会発表] ユズリミン類の炭素骨格の合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      中重雄一・吉信拓哉・早川一郎・坂倉彰
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会(2018)
  • [学会発表] N-アセチルコルヒノールの合成研究2018

    • 著者名/発表者名
      中野陽一郎・早川一郎・坂倉彰
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会(2018)
  • [学会発表] キラルなブレンステッド酸触媒を用いた 3-ニトロクマリンの不斉 Diels-Alder 反応と速度論的光学分割2018

    • 著者名/発表者名
      坂倉彰・藤井裕大・中尾亮太・早川一郎・溝口玄樹
    • 学会等名
      第 11 回有機触媒シンポジウム
  • [備考]

    • URL

      http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~sakakura/bioorgchem/member/hayakawa.html

  • [産業財産権] γ-チューブリン阻害剤2018

    • 発明者名
      臼井健郎,早川一郎,畑中大成,坂倉彰
    • 権利者名
      筑波大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2018-143346

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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