多くの癌の治療法として抗癌剤による化学療法が重要であるが、抗癌剤に対する感受性の低下、すなわち耐性獲得が治療上の問題となる。5-フルオロウラシル(5-FU)は大腸癌・乳癌など多くの癌で用いられる抗癌剤であるが、長期・反復投薬によって耐性を獲得する。研究代表者は、抗癌剤耐性獲得の機序解明を目的としてプロテオーム解析を行い、5-FUに対する耐性を獲得した細胞株において発現が増加するタンパク質として低分子熱ショックタンパク質HSPB1を同定、これが5-FU耐性獲得と関連することを示した。本研究の目的は,①耐性獲得におけるHSPB1の役割を、翻訳後修飾・オリゴマー化・他のタンパク質との相互作用を解析することで明らかにすること、②HSPB1や関連タンパク質が抗癌剤の耐性獲得マーカーとして応用できるかを明らかにすることである。 5-FU耐性株でHSPB1と相互作用するタンパク質として同定した数種類のサイトケラチン及びその限定分解物に加え、別の低分子熱ショックタンパク質であるHSPB6を同定した。5-FUとは異なる作用機序をもつ抗癌剤であるパクリタキセル(PTX) 耐性株と5-FU耐性株を、タンパク質のオリゴマー状態を解析できるブルーネイティブポリアクリルアミドゲル電気泳動(BN - PAGE)を用いて解析し、抗癌剤の違いによってHSPB1のオリゴマー構造とリン酸化状態、同定したタンパク質との相互作用の違いを解析し、抗癌剤の違いによって異なる結果を得た。
|