研究課題/領域番号 |
17K01956
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
淺沼 三和子 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (70381598)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 標的タンパク質 / 質量分析 / 蛍光 / 標識 / LC-MS |
研究実績の概要 |
既に開発している、生物活性化合物の標的タンパク質選択的にNBD蛍光基を結合させる蛍光標識法を用いて、NBD標識されたタンパク質を質量分析法で同定する事は可能であったが、NBD標識ペプチドの検出は容易でなかった。本研究では、光照射によりNBD標識ペプチドからNBD蛍光基が脱離する現象に着目し、液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)を用いたNBD標識ペプチド選択的な検出・分析法を確立し、標的タンパク質のNBD修飾部位の同定を目指している。 今年度は、モデルペプチドおよび多種多様なNBD標識ペプチドを用いて、NBD標識ペプチドを効率的にLC-MS/MSで同定するための試料調製法の確立や、LC-MSシステムの構築を目指した。しかし、使用予定のLC-MSのLCに不具合が多発したことから、LC-MSシステム構築を一旦保留にし、実サンプルへの適用を進めながら、汎用性の高いNBD標識ペプチドの試料調製法の確立を優先することとした。昨年度の実験により、LC-MS導入前に試料の複雑性を下げることがNBD標識ペプチドの検出に有効である知見が得られていたため、それに基づき、分析に適した試料調製の検討を進めた。ミトコンドリア膜タンパク質阻害剤に本蛍光標識法を適用し、培養細胞中でNBD標識されるタンパク質を得たのち、NBD標識ペプチドの回収を試みた。電気泳動後のゲル切り出し、ゲル内消化の手順などの検討を行ったところ、大量の非標識ペプチド中から目的のNBD標識ペプチドを回収する手順を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するにあたって、質量分析計や周辺機器の状態を維持することは非常に重要である。使用予定であったLC-MSにおいて、特にLCの不具合により、しばしば測定を中断してのメンテナンスが必要となった。そのため十分な測定時間を割くことができず、LC-MSシステム構築に関連する各種パラメーターの検討を進めることができなかった。一方で、NBD標識ペプチドの効率的な同定法の確立において鍵となる、LC-MS測定に適した試料調製法に重きをおいて進め、NBD標識ペプチド回収方法の構築に取り組んだ結果、汎用性のある手法の確立に成功している。よって総合的に判断し、おおむね順調に進展していると評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初使用する予定であった機器類の不具合や変更により、実験データの取得が予定通りに進まず、再現性のあるデータ取得が困難となったため、研究を遂行する上での課題として、それに代わる装置の検討を行いたいと考えている。また、LC-MSで取得したデータをタンパク質データベースと照合してタンパク質同定を行う際、タンパク質同定検索エンジンとしてmascotを主に用いて研究を進めているが、検索条件の工夫を行うことで同定率が向上する知見が得られたため、その点に関して調査を行う予定である。NBD標識ペプチドの試料調製の手順はほぼ確立できたため、使用予定機器の環境が整い次第、LC-MSシステム構築に着手し、多種多様のNBD標識ペプチドの解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析データの解析にタンパク質同定検索エンジンmascotを主に用いているが、検索エンジンを搭載しているパソコンの経年劣化によりシステム一式を交換する必要性が生じた。研究継続には当該システムの更新が必要であったため今年度の物品費で購入した。次年度使用額が生じた理由としては、多種多様なNBD標識ペプチド調製に必要な試薬や消耗品の購入時期を次年度としたためである。最終年度は、試料調製時に必要な試薬類や消耗品、LC-MSに関連する試薬および消耗品などを購入予定である。
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