研究課題/領域番号 |
17K01962
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柴田 知範 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (80711960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脊髄小脳失調症31型 / UGGAAリピート / RNA結合性分子 / マイクロサテライトリピート病 |
研究実績の概要 |
脊髄小脳失調症31型は、TGGAAリピートが原因で発症する難治性疾患であり、TGGAAリピートから転写されたUGGAAリピートが関与するRNA介在性神経疾患である。本研究では、UGGAAリピートへの結合を示す分子MCNDが脊髄小脳失調症31型モデル個体の症状を改善することを手掛かりとしてUGGAAリピートが関与する発症機構及び小分子による作用機序を分子レベルで理解することにより、治療法開発に資する有効なツールの開発を目指す。 平成29年度は、小分子によるスプライシング因子のUGGAAリピートへの結合阻害効果を検証するために、SRSFタンパク質を作成した。ゲルシフトアッセイによる評価を行ったが、RNA-タンパク質複合体を明確なバンドとして得られなかったため、小分子による細胞核内でのRNA凝集体形成の阻害効果を調べることにした。76回のUGGAA繰り返し配列を持つ(UGGAA)76発現プラスミドを作成し、Hela細胞にトランスフェクションしたところ、細胞核内においてRNA凝集体を確認した。また脊髄小脳失調症31型の患者由来の配列を導入したプラスミドを用いた実験においても細胞核内でRNA凝集体が見られた。平成30年度以降は、小分子によるRNA凝集体形成の阻害効果を検討していく予定である。 小分子によるUGGAAリピートの機能制御と並行して、さらに有効なUGGAAリピート結合分子の探索研究を行った。研究室が保有している化合物ライブラリーを用いて表面プラズモン共鳴法によるUGGAAリピート結合分子のスクリーニングを行ったところ、MCNDよりも強く結合する化合物を見いだすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、スプライシング因子とUGGAAリピートRNAの相互作用解析、UGGAAリピートRNAによる核内RNA凝集体形成の評価法の確立、UGGAAリピートRNA結合分子のスクリーニングなどに取り組んだ。スプライシング因子とUGGAAリピートの相互作用解析では複合体を観測することができず、評価系を立ち上げることはできなかったが、代わりにUGGAAリピートRNAによる核内RNA凝集体形成の評価法を確立することができた。また表面プラズモン共鳴法を用いたスクリーニングにより、研究室が保有しているライブラリーからMCNDよりも高い結合親和性を示す化合物を見いだすことができ、概ね計画通り順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄小脳失調症31型の発症機構は、不明な部分が多く、スプライシング因子以外のUGGAAリピート結合性タンパク質の関与なども考えられる。UGGAAリピートとスプライシング因子の相互作用解析では、ゲルシフトアッセイにより複合体の形成が確認できなかったことから、一旦中断し、細胞を用いたRNA凝集体形成阻害に注力する。 また研究室が保有する化合物ライブラリーからUGGAAリピートRNAに対して高い親和性を示す化合物を見いだすことができたので、スクリーニングにより新たに見出した化合物とUGGAAリピートの相互作用を詳細に調べ、結合モードなどを明らかにすると同時に、細胞を用いたRNA凝集体形成阻害や脊髄小脳失調症31型モデル個体における治療効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたスプライシング因子とUGGAAリピートの相互作用解析研究が予想に反した結果で研究計画を少し変更したため。またUGGAAリピート結合分子のスクリーニングで予想よりも早く有効な化合物が見いだせたため。 UGGAAリピートに結合する分子をスクリーニングにより見いだすことができたため、MCNDに加えて新たに見だした化合物を用いて細胞実験や脊髄小脳変性症31型個体モデルの実験を行う。
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