研究課題
糖鎖は核酸、タンパク質に続く第三の生命鎖として認識され、その多くの生理作用に大きな注目が集まっている。細胞間の認識、情報伝達、分化、増殖、免疫応答など生命を維持していく上で必須の生命現象を糖鎖が司っていることが明らかにされてきた。すなわち、糖鎖が担う役割や経時的な発現を追跡することは、未知の生命現象を明らかにすることができ、炎症や病気の発症メカニズムを解明できる。このような背景のもと糖鎖関連研究は、国内外において非常に重要な研究内容として位置づけられている。糖鎖の利用法は多岐にわたり医薬品、食品、化粧品などに応用されている。糖鎖の機能解明には多様な糖鎖が一定以上必要となるがその合成は難度が高く、現状では十分な供給が困難となっている。本研究は、これまでに受けた若手研究B及び基盤研究Cにおいて開発してきた「次世代型合成法」を更に発展させることにより課題を解決し、糖鎖の関わる生命現象を解明するための要となる糖鎖分子プローブおよびオリゴ糖鎖を網羅的に創出する。これらの糖鎖を用いて、糖鎖型医薬品の開発、糖鎖型ガンワクチンの創出、ガンの分子イメージング技術への応用を行い、生化学・薬学・医学研究の進展に大きく貢献することを目標とする。本年度においては、目的としたオールマイティーなグリコシル化方法の開発のため種々の酵素固定化カラムの作製、及びそれらを用いた目的糖鎖合成反応条件の確立を行った。その確立した合成条件に則り、目的としている新たな生理活性糖鎖ライブラリーの構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
目標とした位置及び立体選択的な糖鎖合成条件の開発は順調にすすんだ。確立した合成条件を用いて、生理活性糖鎖ライブラリー13種類の構築に成功した。それらの内の糖鎖においてインフルエンザウイルス不活化作用を認めている。以上のように、合成条件の確立、新規ライブラリーの合成達成、それらの効果を導き出しており、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
酵素固定化カラムを作成し、それらのカラムを用いた位置及び立体選択的グリコシル化反応開発を平成29年度に引き続き行う。現在までに合成を可能とした糖鎖構造に加え、更に複雑な構造を有する糖鎖の合成を可能にすることを目指す。また必要に応じて土壌微生物などから新規の酵素を発掘し、本手法による糖鎖合成の応用範囲を拡充する。次に合成した糖鎖ライブラリーをウィルスのタンパク質などの相互作用解析に供し、その応用利用を探る。またビフィズス菌増殖作用や免疫賦活化作用を調査する。
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Bioscience Biotechnology and Biochemistry
巻: 81(10) ページ: 2018-2027
10.1080/09168451