研究課題/領域番号 |
17K01964
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
泉 俊輔 広島大学, 理学研究科, 教授 (90203116)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 放射線 / 被爆 / 新規バイオマーカー / Hepcidin1 / HIF-1α |
研究実績の概要 |
放射線による生体影響は不明な点が多く残されている。我々はマウスを用いた放射線被曝による生体影響の観察から、被曝後に肝臓中で体内の鉄代謝に関わるHepcidinと構造の酷似したHepcidin-2が増加し、尿中に排出されることを報告した。そこで、本研究では鉄代謝の変化とそれに伴う蛋白質またはその代謝物の挙動の変化を解析した。 まず、尿中に排出される鉄量の変化に注目し、マウスを用いて4 Gy被曝前後の尿中鉄量の変化を黒鉛炉原子吸光光度法を用いて観察した。測定結果から、被爆後24時間から72時間において尿中鉄量が増加すること、特に24時間後から48時間後にかけて被曝前と比較して約2倍に増加することが明らかとなった。 次いで、被爆後のマウス肝臓から蛋白質を抽出し質量分析を行ったところ、被曝後のマウス肝臓中から嫌気性解糖系に関わる酵素Triokinaseが検出された。このことから、被爆後に生体内で低酸素ストレスが進行していることが示唆された。そこで代表的な低酸素応答因子であり、低線量放射線被曝で活性化するHIF-1の変化をウエスタンブロッティングを用いて観察した。その結果、被曝直後に減少したHIF-1αの発現量が徐々に回復し、さらに24時間後から72時間後にかけてその量が増加することが明らかとなった。HIF-1αは赤血球の生産を亢進することから、放射線被曝は鉄代謝に影響していることが示唆される。さらに、尿中にその一端が現れることから、より簡便な放射線被曝の新規バイオマーカーとしての可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄代謝を中心とした放射線被曝による生体応答解析として、新規なバイオマーカーを発見していること。
|
今後の研究の推進方策 |
次いで、被爆後のマウス肝臓から蛋白質を抽出し質量分析を行ったところ、被曝後のマウス肝臓中から嫌気性解糖系に関わる酵素Triokinaseが検出された。このことから、被爆後に生体内で低酸素ストレスが進行していることが示唆された。そこで代表的な低酸素応答因子であり、低線量放射線被曝で活性化するHIF-1の変化をウエスタンブロッティングを用いて観察した。その結果、被曝直後に減少したHIF-1αの発現量が徐々に回復し、さらに24時間後から72時間後にかけてその量が増加することが明らかとなった。 さらに、HIF-1α関連の蛋白質が新規バイオマーカーとしての可能性を今後、調べていく予定である。
|