研究課題/領域番号 |
17K01969
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
藤垣 英嗣 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (00612631)
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研究分担者 |
毛利 彰宏 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (20597851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キヌレニンアミノトランスフェラーゼ |
研究実績の概要 |
トリプトファン-キヌレニン代謝経路により生合成されるキヌレン酸(KYNA)の脳内における蓄積は、統合失調症の病因の一つとして考えられている。統合失調症は認知障害を基礎症状とする精神障害の一つで、その病因には諸説があるが明らかにはなっていない。統合失調症患者の脳脊髄液中のKYNA濃度は増加していることが報告されている。また、脳内でのKYNAを上昇させた実験動物は、空間認識能力や作業記憶能力が低下するなど、統合失調症の病態を忠実に表すことが報告されている。これらのことから、生体内でKYNAを産生させるキヌレニンアミノトランスフェラーゼ2(KAT2)の阻害剤は、統合失調症の治療薬として有用であると考えられる。 本年度の研究では、KAT2新規阻害剤の候補となり得る化合物を数種類選定することに成功した。すなわち、KAT2阻害剤を化合物ライブラリーから選別するために、384 well plateを用いたKAT2阻害剤ハイスループットスクリーニング法の開発に成功した。この方法を用いて東京大学創薬機構より提供を受けた約13,000種類の化合物を含む化合物ライブラリーのスクリーニングを行った結果、数種類のKAT2酵素活性を有意に阻害する化合物の選定に成功した。これらの化合物の中には低濃度でも有意にKAT2酵素活性を阻害する物質が含まれており、統合失調症新規治療薬としての開発に利用できる可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は①KAT2阻害剤スクリーニング法の開発と②化合物ライブラリーのスクリーニングを行い候補化合物を選定することである。384 well plateを用いたハイスループットなKAT2阻害剤スクリーニング法の開発に成功し、約13000種類の化合物を含む化合物ライブラリーのスクリーニングにより数種類のKAT2酵素活性を有意に阻害する化合物が得られたことから、本年度の目標は達成できている。次年度以降に行う予定であった阻害様式の解析やin vivoでの評価にすでに着手しており、本研究課題は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究計画により得られた候補化合物の詳細な解析を行い、阻害様式や阻害活性を求め、KAT2阻害剤としての評価を行う。また、候補化合物をリード化合物として誘導体の合成を行い、リード化合物の最適化を行う。得られた化合物を統合失調症モデルマウスに投与し、in vivoでの評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、阻害剤スクリーニングを自施設で行うためにマイクロプレート分注器を備品費として計上していたが、東京大学創薬機構の施設を利用して行うことが可能であったため購入しなかった分の差額が生じた。 次年度の研究計画では予定していなかった化合物の最適化合成の費用が生じるため、その分に未使用額を充てる予定である。
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