自閉症関連遺伝子であるNeuroligin3及びCASKの変異マウスを用いて、シナプス機能を解析した。 Neuroligin3遺伝子のR451Cアミノ酸点変異をノックインされたマウスの急性脳スライス標本を作成し、内側前頭葉第5ピラミダル細胞からパッチクランプ電気生理記録を行い、その細胞に入力する興奮性及び抑制性シナプス入力を解析した。このNeuroligin3 R451Cマウスにおいては、興奮性シナプス入力の亢進と抑制性シナプスの減弱が観察された。この興奮性シナプスと抑制性シナプスの異常は、ナトリウムチャネル阻害剤であるテトロドトキシン非存在化で顕著であったことから、神経細胞における活動電位依存的なシナプス放出が、シナプス機能の異常に関係することが示唆された。本マウスの体性感覚野では抑制性シナプスが増強していることが報告されているが、内側前頭葉を対象として解析を進めた本研究から得られた結果とは異なっていた。このことから、Neuroligin3が関係するシナプス機能には脳領域特異性があることが示唆された。 CASKは患者のほとんどが女児である知的障害の原因遺伝子として報告されており、シナプスに多く分布することから、シナプス機能に関わることが示唆されていた。本研究では、CASKヘテロ欠損マウスの体性感覚野の急性脳スライスのCASK発現細胞とCASK欠損細胞からパッチクランプ記録した。その結果、CASKヘテロ欠損細胞では、興奮性シナプスが増強し、抑制性シナプスが減弱するというシナプス異常が観察された。そしてそのシナプス異常には、CASKによるGluN2Bの発現調節が関わっていることを明らかにした。
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