研究課題
うつ病患者の脳脊髄液や動物うつモデルを用いた研究から、うつ病発症と脳血管障害や脳内炎症との関連が示唆されてきている。本年度はうつ病モデルマウスにおける血管周囲マクロファージ(PVM)の機能変化について解析した。最初にマウス慢性拘束ストレス実験の条件検討を行った。その結果、マウス系統によりストレス脆弱性が異なり、うつ行動発現の効率に違いがあることが分かった。特に遺伝子組換えマウス作成で汎用されているC57BL/6Jマウスは、体重減少、副腎肥大、ストレスホルモンの増加等、有意な身体的ストレス応答が見られる一方、うつ行動の発現効率がBALB/cマウスに比べて低かった(Tsuchimine et al., 2018)。次に慢性拘束ストレスを与えたBALB/cマウスの脳サンプルを用いて、PVMマーカーであるCD163の免疫染色および発現変化を解析したところ、慢性ストレス群ではCD163陽性PVM数が減少している可能性が示唆された。PVMは血中や血管周囲の老廃物のクリアランスに関与していると予想され、慢性ストレスによるPVMの機能低下が脳の免疫及び恒常性異常を引き起こし、疾患発症につながっていることが示唆された。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 525 ページ: 33~38
10.1016/j.bbrc.2020.02.073