研究課題/領域番号 |
17K01987
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石川 淳子 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30570808)
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研究分担者 |
美津島 大 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (70264603)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海馬CA1 / リップル波 |
研究実績の概要 |
強い情動性経験により海馬CA1で超高頻度発火が起き、その後、海馬CA1リップル波が増加することが解っているが、このリップル波の増加が超高頻度発火によって引き起こされている可能性がある。このことを調べるために、神経活動記録用電極近傍に薬物投与用ガイドカニューラを設置して、GABA-A、GABA-B受容体アゴニストであるムシモールとバクロフェンを海馬CA1に投与しながら、神経活動を記録する方法を試みる予定であった。しかしながら、電極-ガイドカニューラの設計が困難であり、未だ完成には至っていない。一方、情動の中枢である扁桃体基底外側核を不活性化することによって、拘束ストレス中に起きる超高頻度発火が減少することが明らかとなった。そこで、リップル波についても解析を行ったところ、リップル波の増加も阻止されていた。この結果は、超高頻度発火とリップル波増加の因果関係を示唆するものである。また、リップル波の波形解析を行ったところ、強い情動を引き起こす拘束ストレス後や異性ラットとの接触後に発生するリップル波のduration, arc-length, amplitudeが、経験前と比べて大きくなることが解った。一方、同性ラットや新規物体との接触では、リップル波形に顕著な変化が起きないことが解った。さらに, リップル波形は、経験間でも違いがあることが解った。以上の結果から、海馬CA1リップル波には、情動性経験の記憶情報がコーディングされていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標は海馬CA1の超高頻度発火を薬物で抑制しながら神経活動を記録することであるが、そのための電極―ガイドカニューラシステムの設計が困難であった。一方、扁桃体基底外側核の神経活動を不活性化すると、超高頻度発火が抑制され、リップル波の増加も阻止されるということが解った。これは、リップル波増加と超高頻度発火の因果関係を示唆しおり、研究開始当初、全く予期していない重要な発見ができた。また、平成30年度に行う予定にしていたリップル波の形状解析をすでに開始し、リップル波には情動性経験の記憶情報がコードされている可能性あるという重要な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は電極―ガイドカニューラシステムを完成して、海馬CA1の超高頻度発火とリップル波増加の因果関係を調べる。また、超高頻度発火の発生に、海馬CA3からCA1への興奮性入力が関わっている可能性も調べる。このために、まずこの2つの領域の神経活動の同時記録を行い、海馬CA1で超高頻度発火が起きているときのCA3の活動特性を調べる。さらに、CA3の不活性化が、CA1超高頻度発火の発生に与える影響についても調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、電極ーガイドカニューラシステムを完成させて、実験を行う予定にしていたが、システム構築が困難だったため、当初の計画を変更せざるを得なかった。このシステム構築とそれによる実験は次年度に行うことになった。そのため、システム構築にかかる費用とそれを用いた実験費用は次年度にかかることになった。
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