研究課題/領域番号 |
17K01999
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡邉 一哉 山形大学, 農学部, 准教授 (80406892)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 沿岸生態資源 / 二枚貝養殖 / 持続性 / 災害 / バンドン湾 |
研究実績の概要 |
環境や人為的にもたらされる攪乱に対して、生物資源とそれを利用するヒトがどのような対応をし、高い生産性と利用域の拡張を同時に達成してきたのだろうか。地域のくらしは、地域固有の環境特性をふまえた知識体系や技術体系をはぐくんできていると言え、生態資源との相互依存性は、地域社会の基礎構造に埋め込まれていると言える。本研究では、タイ国バンドン湾の環境において、攪乱と応答の繰り返しを復元生態史と位置付け,現在に至るまでの相互依存の形成過程を視座で再構築していく。そして,地域資源の潜在力を拡張しながら利用し、環境劣化や自然災害に対して柔軟に対応する知識や技術がもたらした相互依存性を持続するためのプログラムを可視化・指標化することを目的としている。 H30年度は,引き続き政権変動による制度変化との調整に苦慮した。一方で,H29年度から調査中心地としたKanchanadit群における調査は,これまで(前科研助成も含む)の取り組みの積み上げが実を結ぶ成果が得られ始めた。具体的には,当該地域における仲買い業と養殖業を兼業する有力者の協力を得た,カキ養殖の主力漁村におけるアンケート調査を実施出来たことである。この回収率は90%と高く,また1980年代から現在(2018年)までの災害発生年とその被害程度,そして回復期間を数量的に把握することが出来た。 タイ政府が沿岸二枚貝養殖に関する統計情報を殆ど有していない現状を鑑みて,これらの成果は当該地における地域生態資源利用の持続性の解明につながる大きな成果となった。得られたデータの解析をさらに進め,同時に不足している雨季の漁撈実態を集積することが次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年のクーデター以来,軍事政権による制度変更の影響は今も続いている。加えて2016年のラーマ9世崩御により,その混乱の深度は増しているとさえ感じる。 一方で,「研究実績」でも述べたが,調査地を絞り,現地の有力者の協力を得て3村に渡るアンケート調査を実施できたことで,本研究の基本的問いかけである「環境や人為的にもたらされる攪乱に対して、生物資源とそれを利用するヒトがどのような対応をし、高い生産性と利用域の拡張を同時に達成してきたのか」に対する,数量的なデータを多く得ることが出来た。これらの解析と今少しの補完調査を行う事で,本研究目的を達成可能と判断し,現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」と結論した。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度に得られたデータの解析をさらに進め出来るだけ長期間の資源利用における災害と復元の再構築に努める。現地調査では,これまでの調査結果を補完する調査を実施する。既に完了した調査対象海域の養殖区画図を用いて聞き取りを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に予定していた調査人員よりも少ない人員で調査を実施できたこと,およびコンピュータの購入を次年度に持ち越したことで生じた。 2019(令和元年)度の調査における経費(人件費,渡航費および謝金),さらにデータ整理用に必要なコンピュータの購入に充当する。
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