研究課題/領域番号 |
17K02001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
受田 宏之 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20466816)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メキシコ / 先住民 / オトミー(語族) / 不平等 / 多文化主義 / インフォ―マリティ / 貧困 / ビデオ製作 |
研究実績の概要 |
2018年度は、5月にバルセロナ(Latin American Studies Associationの年次大会)とベルリン(ベルリン自由大学のラテンアメリカ研究所でのセミナー)で、先住民移住者のかかわるインフォーマルな政治過程を扱った報告を行った。また、8月から9月にかけて2週間ほどメキシコに滞在し、先住民に関する調査に従事した。これら2回の海外出張には本科研費を用いた。2017年度に未使用だった分を含め、予算をほぼ全額(96万円)使用した。11月には、ラテン・アメリカ政経学会のメキシコ・パネルで、先住民問題についての報告を行った。2019年3月には、別の科研費を用いてメキシコを10日間ほど訪れ、オトミー移住者の出身村(サンティアゴ・メスキティトラン)に滞在し、先住民学校教員へのインタビュー等を実施した。 共同研究者であるINAH(国立人類学歴史学研究所)教授のAlonso Guerrero氏とは、ビデオの製作、インフォーマントへのライフヒストリーの聞き取り等、オトミーについての共同研究を続けている。もう1人の共同研究者であるUNAM(メキシコ国立自治大学)のIsrael Banega教授は、9月に日光で開催されたラテンアメリカ学術会議において、メキシコの不平等の最新動向を論じた報告(“Crystallization of social inequalities in Mexico”)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年9月の地震の影響がいまだ残っていることや調査助手の都合から、オトミー移住者に関する悉皆調査は実施できなかった。だが、それ以外の調査については概ね順調に進展した。先住民のエンパワメントを目的の1つとするビデオの製作は、年に1本のペースで続いている。11月に行った研究報告では、「テクノクラートのメキシコと多文化主義のメキシコの相克」という観点から、先住民問題の流れを捉えようとした。経済学的アプローチと人類学的アプローチの融合という難題への1つの答えとなっている。 執筆については、インフォーマルな政治過程を論じた日本語論文(「不法占拠と露天商の生命力:インフォーマリティの政治経済学」)が現代メキシコに関する共著の1章として出版されたが、それを拡充したスペイン語論文を投稿するには至っていない。学会報告は3度行った。予定していたAlonso Gurrero氏の来日は予算の制約から実現できなかったものの、共著のプロジェクトは続いている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は8月に一ヵ月近くメキシコに滞在し、不法占拠地に集住するオトミー移住者の親族ネットワーク、およびメキシコシティと出身村の双方における二言語多文化教育の実態を調査する。加えて、先住民の集中地域に既に10校以上創設されている間文化大学(universidades interculturales)の関係者へのインタビューを実施する。間文化大学は、幼稚園と小学校を対象とする先住民学校とは異なり、先住民コミュニティの発展に貢献するリーダー層の育成を目指すものであり、本研究にとって興味深い存在である。 研究成果として、『東洋文化』に本研究の内容を一部含む論文が年内に掲載される見込みである。メキシコの学術誌(Foro Internacionalなど)にも成果の一端を投稿する。海外での研究報告は今のところ予定していないが、2020年1月に東京大学駒場キャンパスでメキシコとチリの研究者を集めて不平等をテーマとするワークショップを開催する計画であり、そこで本研究にかかわる報告を行う。Alonso Guerrero氏との共著の執筆には、その一部の学術誌への投稿を含め、継続的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
二度海外に出張したものの、本務先の業務のため、全額使い切るだけの出張日数分は滞在できなかったため。
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