コロナ禍によりフィールドワークが予定通り実施できず、延長を繰り返すことになったが、最終年にあたっては、これまで培ってきたケニア、ウガンダの研究者との関係性をオンラインにて積極的に強化し、Internetにアクセスできる現地の研究者らと研究ネットワークを形成することができた。それによって、国際的な口頭発表、出版がすすんだ。 後半には所属先の研究所にてナイロビ大学から研究協力者であるトム・オンディチョ准教授を共同研究者として招へいし、本課題の「ハウスガール」に多いシングルマザー、性観念の変化、性教育について議論し、2023年1月末に開催した国際シンポジウム「現代アフリカにおけるセクシュアリティ:伝統、教育、そして実践」ではその一部を発表することができた。
本課題の全体的な研究成果としては、「ハウスガール」になる人びとの契機がその育った背景にもよるが80~90年代と、小学校無償化が始まった2000年代以降に変化が見られることがあきらかになった。ハウスガールになる人びとのイメージは下流階層、小学校卒の低学歴がステレオタイプであったが、セカンダリーやカレッジ中退、卒業など高学歴化し、変化している。近年の教育熱の向上からハウスガールとして働くシングルマザーの教育費負担が大きくなり、子の大学やカレッジの学費、さらには就職先のない無職の高学歴の子を抱えるシングルマザーの困難な事態がみられた。自らの老後の居場所もないままに娘がシングルマザーになるケースも多い。 課題延長期間中には全世界がコロナ禍を経験し、アフリカにおける経済的打撃の経験は、これまでは「ハウスガール」にならなかった層が国内で経験のないまま国外、とりわけ中東にむけて「ハウスガール」として出向するという事態に大きく変化した。コロナ以前からの本研究を土台に、そのダイナミズムを今後も捉えていくべき課題もみえた。
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