研究課題/領域番号 |
17K02003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山崎 太郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40239942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 芸術諸学 / 独文学 / 社会学 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目となる2018年度は、アメリカおよびドイツに赴き、日本では入手しがたい資料・情報を収集することができた。具体的な成果としては ①ニューヨークでメトロポリタン歌劇場資料室を訪問、科研費研究の主対象となる《パルジファル》アメリカ初演に関する記録資料をPDF化して提供されたうえに、マイクロフィッシュで古新聞を閲覧。さらには離接するニューヨーク公共図書館のperforming arts&films分館を訪問、同3階の研究者専用資料室に入室を許可され、《パルジファル》北米初演をめぐる20世紀初頭の文人・音楽家たちの貴重な直筆書簡を閲覧、撮影することができた。 以上の調査により、《パルジファル》上演の決定・発表から初演に至るジャーナリズムおよび世論の推移を時間軸に従って綿密に炙り出せたこと、ヨーロッパにおいても、この北米初演の是非を問う議論が音楽家に限らず広範な知識人層を巻き込んでおきていた事実を把握できたことは大きな成果であると考える。 ②ミュンヘン郊外で行われたシンポジウム『リヒャルト・ワーグナーと神学』(2019年3月22日~24日)に参加、各分野の専門家(ワーグナー演出史研究、法律学、中世文学、音楽学)による発表が提供する多様な視点からのアプローチを聞き、特に本科研費の対象テーマとなる《パルジファル》という作品の宗教的性格について知見を深めた。さらに前後してバイエルン州立図書館を訪問。《パルジファル》関連の研究書や古文書資料6点をPDFにスキャンして持ち帰った。 現在は上記2度にわたる海外出張の成果を整理・解読し、今後、当研究のとりまとめに向けて必要となる作業に向けての準備を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度同様、勤務校の授業、組織内の運営について多くの労力を傾注する必要が生じた関係上、本研究に多くの時間を割くことができなかったものの、2回の海外出張を果たし、資料の収集に一定の成果をあげることができた。とりわけ、1903年の《パルジファル》アメリカ初演については関係文献・新聞記事等、必要な資料をほぼ網羅することができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度のアメリカ出張によって、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場における《パルジファル》のアメリカ初演(1903年)および、それに続いて同歌劇場が行なったアメリカ東海岸諸都市への巡業公演の内容についてはほぼ情報を網羅することができた。一方、本研究のもう一つの柱となるヘンリー・サヴェージ巡業歌劇団の北米大陸公演については未だ多くの情報・資料を収集・補充する必要があるため、今年度は中西部(シカゴ)、西海岸(サンフランシスコ歌劇場、スタンフォード大学図書館)を含むアメリカへの出張を行なう。またインターネットにより、各地方都市の古新聞アーカイヴにアクセスしつつ、各都市での上演の現地での反響や批評を伝える記事を収集・整理し、巡業公演の様子を再構成する。以上のような手順で、収集した資料について解読・整理・翻訳を行ない、論文・著書執筆に向けての準備を可能な限り進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目となる本年度は最初に予定していた通りの予算消化がほぼできたものの、初年度の多忙状態で繰り越しになった予算額が大きかったため、その額が若干残り、次年度への持ち越しとなった。残額は次年度と合わせ、資料収集のための出張旅費として消化する予定である。
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