研究課題/領域番号 |
17K02003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山崎 太郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40239942)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 芸術諸学 / 独文学 / 社会学 / 西洋史 |
研究実績の概要 |
春休みに予定していた北米大陸への出張が新型コロナ感染の影響で不可能になったものの、2018年度までに収集済みの文献・資料の解読に加え、インターネットを駆使しての古新聞資料の検索・収集によって、ある程度の成果を得ることができた。具体的には ①アメリカの古新聞資料最大のアーカイヴを持つwebサイトHistorical Newspapersへのアクセス権を得ることで、1903年~05年にかけての《パルジファル》に関連する記事を検索、合計2万5千件以上の記事をメトロポリタン歌劇場における同作品のアメリカ舞台初演に関連する記事、ヘンリー・サヴェージ巡業歌劇団の北米大陸公演についての記事に大きくカテゴライズし、特に後者についてはDaniela Smolov Levyの博士論文に掲載された図表をもとに、巡業地と公演日付に従い、全体をもう一度整理、各都市と地方ごとの状況と反応が分かるようにした。②上記を整理する過程で、《パルジファル》が音楽愛好家以外にも広くアメリカ人一般の関心の種となっていたこと、この作品をもとにしたパロディーや小説、芝居が書かれていた状況や、作品の宗教性をめぐる論争、作品紹介のエッセイや論文が新聞という媒体でも頻繁に扱われた状況にも改めて注目することができた。③収集済みの著作や論文を読み込むことで、1903年の舞台初演以前にもアメリカ合衆国では、バイロイトにおける《パルジファル》世界初演(1982年夏)の2か月後には早くもいくつかの演奏会で同作品の前奏曲が紹介され、抜粋上演も何度か行われたうえ、1890年代に入ると、演奏会形式の全曲上演もニューヨーク、ボストンで複数回行われ、注目と関心が広がっていた状況を把握・整理することができ、舞台初演に至る作品受容の下地が作られていくまでの歴史を重要な視点として、当研究に加えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
勤務校の授業、組織内の運営について多くの労力を傾注する必要が生じたことに加え、新型コロナ感染の影響によって、2~3月のアメリカ出張が不可能になった。インターネットの活用により、古新聞記事の収集には予想外の成果を挙げることができたものの、その結果、今後も解読・整理しなければならない資料が膨大なものとなり、現在も読み込みを続けている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年まで収集した文献の解読に加え、ついに収集が叶った膨大な古新聞資料の解読・整理を進めつつ、著書の執筆に着手する。また、著書に先立って、これまでの成果を一応のかたちにまとめるべく論文・研究発表の場を求めていきたい。 また新型コロナ感染の影響で、今年度中に海外への出張ができるかどうか予断を許さない状況ではあるが、資料の補充および資料整理と原稿執筆の過程で生じる疑問や新たな視点の確認のため、可能であれば、中西部(シカゴ)、西海岸(サンフランシスコ歌劇場、スタンフォード大学図書館)を含むアメリカへの出張を再度行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年2月の渡米、3月の渡独で、研究推進に資する多くの資料を収集・持ち帰ることができたものの、新年度開始以降、予想を超えて授業負担が大きくなったのに加え、組織運営面にもエネルギーを注入しなければならない事態が発生し、本テーマ研究にかけられる時間がほとんどなくなったため。 残額については今年度の後半、資料補充と実地調査のためのアメリカ大陸への再出張に充てる。もし新型コロナの感染が収束しておらず、海外渡航が不可能な場合は、日本からも可能な文献・音源資料の補充、および膨大な資料整理のための人件費に充てる。
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