研究課題/領域番号 |
17K02005
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
長谷川 秀樹 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (20322026)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コルシカ / 民族主義 / フランス共和国憲法 / 島嶼性 / 分化の権利 / マクロン政権 |
研究実績の概要 |
コルシカ島とフランスとの地域―国家関係の変動について、2018年2月のマクロン大統領の公式演説と、これに伴い同年5月フランス国会に出され、2019年4月現在も審議中である憲法改正法案における「コルシカ島の特殊性」(同法案第16条、改正憲法案第72-5条)がどのように認められるのか分析しながら明らかにした。その特殊性とはEU加盟国のいくつか(スペイン、イタリア、エストニア、クロアチア等)ではすでに憲法や法律において明記されているも、フランスではこの憲法改正上初となる「島嶼性」であることも明らかにした。 また、このフランスの憲法改正はコルシカ島のみにかかわるのではなく、かつてDOM-TOMと称されたフランス領の海外県や海外公共団体の地位を規定する第73条と第74条にもかかわるもので、コルシカ島とフランス国家との関係変容は同時に海外県・海外公共団体の島嶼地域とフランス国家との関係変容にも及ぶため、2018年11月・12月は、インド洋にあるフランス領の島嶼地域、レユニオンとマヨット(ともに海外県)で現地調査や資料収集を行った。この2島嶼地域ではコルシカのような民族主義(ナショナリズム)は芽生えにくいものの、貧困・失業・物価高・福祉政策の不十分さ・周辺途上国からの移民流入に対する怨嗟等に起因する異議申し立て運動が断続的に生じ、これにフランス政府やEUがどのように対処しているのか、それと「島嶼性」との関連について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年はコルシカ民族主義の主張に対してフランスのマクロン政権が公式にコルシカを訪問し、そこでの演説に明確に回答したり、フランス憲法改正とコルシカの地位を憲法に明記させたり、という民族主義とこれに対応する政府の動きが明確に出てくるケースがいくつか見られ、現状把握がしやすかった。 比較の対象として2018年度はフランス海外県の島嶼地域(レユニオン、マヨット)を取り上げ、実際に現地で調査や資料の収集活動を行えた。レユニオン島では現在フランスで問題となっている「黄色いベスト」運動が先鋭化したため、計画通りの調査が実施できない日もあったが、一般島民の意見を聴取する機会もあり、本研究課題の今後の進展には大いに資するものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
フランスにおける「島嶼性」の概念形成過程を、フランス社会諸科学でこれまでに取り上げられてきた島嶼研究や地理学研究などから明らかにすると同時に、ヨーロッパ・EUレベルにおける「島嶼性」概念とどう関連しているのか考察する必要性を感じているので、最終年度はまずこの点に注意を払いたい。 比較として、フランス同様地中海に島嶼地域を抱えるイタリア(シチリア、サルデーニャ島)もしくはEU共通市場に統合されつつも、超周辺地域であることを理由に特別措置が取られているスペイン、ポルトガルの大西洋島嶼地域(カナリア諸島、アゾレス諸島、マディラ島)の自治、税制、交通運輸制度および言語文化的特性と民族主義意識、運動、政策の有無について現地調査により明らかにする。
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