コルシカ民族主義とフランス、EUとの三者関係の変容の比較のため、ヨーロッパ(EU)「超周縁(RUP)」の島嶼地域と当該国およびEUとの関係について、現地調査および、政治行政、学術、経済関係者とのインタビューや聴き取りを含めた調査を実施した。対象は、北大西洋(マカロネシア)のカナリア諸島(スペイン)、マディラ島・アゾレス諸島と、北海・バルト海のフェロー諸島・ボーンホルム島(デンマーク)およびゴットランド島(スウェーデン)である。 民族主義については、カナリア諸島・フェロー諸島では、スペイン・デンマーク両国からの分離独立を含めた運動が見られるものの、他島嶼地域では持続的な運動は見られなかった。一方、これらの島嶼地域のうち、ボーンホルム、ゴットランド以外のすべての地域には自治権が付与されており、自治権付与には至らない後者2島についても、島嶼地域独自の地方自治制度が導入されていることが分かり、EUとの関係については、フェロー諸島のみが、自治権を根拠にEUそのものに加わらないことを住民投票で決定しているものの、他島嶼地域については、マカロネシア3島嶼地域が上記RUPに基づく特別措置POSEI(離島特別選択プログラム)を享受していることが分かった。本年度後半は、コルシカ島のPOSEI適用の可能性を探るため、POSEI制度の背景、変遷、成果、課題について調査を行った。 最後に、現在なお進行中であるフランス憲法改正審議において、コルシカの特別地位と島嶼性との関係がどのようなものであるかを、フランスの他の島嶼地域(海外県など)の議論と比較して分析考察するとともに、同じく憲法改正で第118条に「島嶼性」を明記しようとしているイタリア及びサルデーニャ島の動きも併せて考察し、島嶼地域―国家―EUの三者関係において従来、地理学・生態学的概念である「島嶼性の法制度化」が重要な部分を占めると結論した。
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