研究課題/領域番号 |
17K02014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 詞子 京都大学, 野生動物研究センター, 研究員 (60402749)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マハレ山塊国立公園 / タンザニア連合共和国 / 環境モニタリング / 気候変動 / 在来知 / 植生の長期的変動 |
研究実績の概要 |
今年度は、これまでに収集された気象と植物季節動態にかかわる一次資料の電子化を中心におこなった。 調査地(マハレ山塊国立公園、タンザニア連合共和国)では、温暖化の影響が気象資料から認められている。2016年までの資料の電子化作業を終え、雨量の予備分析をおこなった。その結果、既に30年分の資料から確認されている、降雨量の減少傾向が認められた。調査地では、記録のある1984年以来エルニーニョ・南方振動(ENSO)の影響が認められたのは、唯一世界的に大きな影響を及ぼした1997~1998年のイベントである。2015~2016年のENSOは、1997~1998年ほどではないが大きなインパクトがあったとされているが、はっきりとした傾向は見られなかった。さらなる資料の分析によって確認する必要がある。これにより、雨量の減少傾向についても再検討の必要がある。 この一帯を居住地としていた人びとは、精緻な植物分類体系をもっている。しかし、国立公園化と学校教育の浸透に伴い、こうした在来知は失われつつある。彼らが将来的にこうした知を利用できるようにするため、さらには、環境変動のなかで植物自体が失われていく現状に鑑みて、現地植物名や該当植物の情報についての資料収集は急務である。現地植物名の表記方法については、地域住民にとって馴染みのある形式にほぼ修正し終わった。次年度はリスト化した印刷媒体を持込み、地域住民の助力を得てさらなる精確を期す予定である。図鑑作成に必須の植物写真の収集や、植物についての情報収集も継続中である。 気候変動と植生遷移の双方の影響をうけている調査地の植生についても追跡調査をおこなっている。三度目となる植生の長期的変化を明らかにするための調査準備として、既同定個体の生存状況の確認と、探索効率あげるための詳細なマッピング作業をおこなった。次年度以降本格的な第三回植生調査を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた、気象データの電子化、植生の長期的変動のモニタリング(既同定個体の生存状況の確認とマッピング)、植物リストの編纂にかかわる情報収集とデータベース上での修正、については予定通り作業を進められた。ただし、植物季節動態についての一次資料の電子化作業に若干の遅れがある。毎月一回おこなっている植物季節動態にかかわるモニタリング資料の電子化は、2014年1月分から進めているが、膨大な資料のため2015年5月分までしか終わっていない。この点については、次年度よりアルバイト要員を確保できたので、迅速に進むと予想される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、手つかずの一次資料(気象、植物季節動態)の電子化を、アルバイト要員を最大限活用して進める。また、植生変化にかかわる資料についての、データベース化を進める。平行して、植物季節動態の長期的変動を把握するための、データ解析のプログラミングをおこなう。植物についての情報(現地名、異名、植物本体の詳細情報、画像情報)収集を、引き続き現地でおこなう。 来年度以降、植生の再調査・電子化・分析をおこなうとともに、過去二回の植生調査の結果と比較し、長期的変動について把握する。気象および植物季節動態についても、その長期的変動を明らかにし、公表する。さらに、植物について収集できた資料をもとに、植物リストと植物図鑑を出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じたのは、資料の電子化をお願いできるアルバイト要員を確保出来なかったこと、現地調査にかかわる費用や設備備品費の購入を翌年度以降の使用に回したこと、が理由である。来年度については、植物季節動態モニタリング用記入シートの現地への郵送、調査許可取得にかかわる費用、現地調査費、消耗品費にあてる計画である。また、今年度は困難だった、環境モニタリングの一次資料の電子化作業を手伝ってもらうアルバイト要員として、二名を確保出来たのでその謝金にもあてる。
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