研究課題/領域番号 |
17K02014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 詞子 京都大学, 野生動物研究センター, 特任研究員 (60402749)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 植物相 / 気候変動 / 在来知 / 科学知 |
研究実績の概要 |
本研究の調査対象地域である、東アフリカ・マハレ山塊国立公園、タンザニア連合共和国では、温暖化の影響が気象データの分析から認められており、これまでにおこなった植生、植物フェノロジー(季節動態)の分析からも気候変動の影響が示唆されている。しかしながら、昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの世界的感染拡大と、調査地の医療・検査体制の脆弱さに鑑み、これら長期データ収集のための現地調査を再開することは困難であった。そこで、昨年度末時点でこうした場合を想定して準備した、以下の調査をおこなった。 本研究課題は、調査対象地域であるマハレの植物相についての在来知-科学知横断的な把握を目的の一つとしている。喫緊の問題は、教育や暮らしのあり方が大きく変化する中での在来知そのもの、並びに、地球温暖化による生物種の大規模な絶滅を引き起こす可能性が危惧される中での知の対象物それ自体の双方が失われつつある現状である。幸運にも、マハレには、主にパイオニア研究者たちが1960年代から80年代初めにかけて集めた、現地植物名やその植物の種同定結果のリストがある。しかし、標本の不備などで同定に至らなかったものについては現地名以外にリストには手がかりがない。こうした植物名に関するこれまでの聞き取り調査からは、そもそも対象者が聞いたこともない名称であることも多く、聞き取り対象者を広げる必要があると共に、名称以外の当該植物についての情報が必要である。 そこで、今年度は現地の植物名以外の情報が不十分なものについて、先人研究者が遺した未整理の膨大な資料を整理しながら探索をはじめた。現時点で200点程度の植物に関わる資料をピックアップすることができ、並行してデータベース化をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響が継続しており、予定していた現地調査をいっさいおこなうことができなかった。このため、環境変動にかかわる資料や、植物の在来知にかかわる一次資料の収集ができなかった。また、現地調査できなかった場合は、先人研究者が遺した過去の資料の精査を目標としていたが、膨大な量だったため全てを確認するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の大きな目的でもある、植物についての在来知や植生にかかわる現地調査をおこなうことが、第一の目標である。残念ながら、現時点では、日本国内でも新型コロナウイルスの変異型が猛威をふるっている状況であり、調査地についてはもともと医療体制が脆弱なこともあり、調査再開の見通しがいまだ立たない。 そこで、今年度に引き続き、国内にとどまったままでも可能な、植生変化や植物リストのアップデートに関する研究調査として、当該地域の先人研究者の遺した資料を最大限活用した調査研究をおこなう。具体的には、植物にかかわる手書き資料や、過去の植生がうかがえる写真資料などを整理し(現状ではその他の資料とともに未整理の状態で保管されている)、可能なものについては撮影や電子スキャンなどの電子化とデータベース化を進める。元の資料数が相当数にのぼるため、その全てを1年以内に探索し尽くすことは不可能と推測される。そこで、現時点で発掘できている約200点の植物関連資料をもとに、これまでに申請者が現地で収集した植物情報との照合作業をしつつ、現地名しか情報のなかったものについては今後の現地での観察・聞き取り調査で使用できるよう情報の整理をしていく。これらの資料をもとに、植物図鑑用のデータをアップデートするとともに、文献資料などとも合わせて、過去の植物相や景観についての分析をおこなう。並行して、調査再開時にスムーズに開始できるよう、準備をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
過去資料が予想以上に点数が膨大だったことと、その種類も多岐にわたったため、今年度は大まかな資料点検と、関連しそうな資料の抽出作業にほとんどの時間を費やす必要があった。資料の中には個人情報などが含まれていることもあり、外部にそのまま委託することもできないため、結果的に支出が低く抑えられることとなった。次年度は、大まかな整理がついて外部閲覧に問題がないと判断された資料について、電子化作業を外注、もしくはアルバイト等に依頼する予定である。また、劣化が問題となるような資料を良好な状態で保存するための物品費、結果をまとめるにあたって追加で必要な書籍等の物品費などの支出をおこなう予定である。
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