研究課題
本研究課題は、調査対象地域である東アフリカ・マハレ山塊国立公園(タンザニア連合共和国)と周辺域に暮らしてきた人びとのもつ在来知と、科学知の横断的な把握を大きな目的としている。いずれの知も、前者は教育や暮らし方の変化によって、後者は気候変動の影響の兆しによって大きく変容、あるいは消失する可能性がある。最終年度は、昨年度以降にデータベース化した調査地域の植物関連の過去資料の点検を行なった。具体的には、データベースに紐づけして整理した植物の画像資料から、現地の方名と種の特定を試みた。全246点の資料のうち、86%は方名を、89%は種を推定できた。方名を推定した211点のうち157点は、申請者もよく知っている植物で、残り54点はこれまでに現地で直接観察したことがない植物や、聞き取り調査では未知の方名などであった(推定される学名をもとに既出版物から方名を推定)。後者については、今後、方名についての聞き取り調査や種同定の可能性がひらけたことを意味し、在来の植物知識全体を記録に残すための貴重な資料であることは明らかである。こうした研究が可能となったのは、現地調査が可能だった2019年度以前に行なった、方名についての聞き取り調査や、植物の直接観察の積み重ねがあってのことである。気候や植生の長期的変動についても、取得済みの資料などをもとに分析を行なった。その結果、気温(最低気温と最高気温)、雨量、降雨パターンには、1984年以降2016年までに、温暖化の影響を含む長期的な変動傾向が継続していることを確認できた。現地調査が中断したため、本研究で3度目となる植生の定量的な調査は調査対象域の27%にとどまった。そこで、植生にかかわる過去2度の定量的な資料と、さらに昔のこの地に人びとが暮らしていた時期までさかのぼる定性的な資料などをもとに、人間を含むこの森の変遷についてまとめた。
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Extremities: The Evolution of Human Sociality (Kawai, K ed.)
巻: - ページ: 47-76
『たえる・きざす』(伊藤詞子編)
巻: - ページ: 297-326