2023年7月公刊予定のカンボジア関連の書籍に、パリ和平協定後の森林管理に関わる30年間の動向と特色を俯瞰した章を、分担執筆者として記した。その中に、本研究課題実施全期間中に明らかにした多種多様な事柄とともに、本年度の研究成果を盛り込んだ。 本年度の研究成果として具体的に盛り込んだのは、森林管理に関わるフォーマルな体制だけでなく、インフォーマル、すなわち影の体制を維持するために、現首相率いる最大与党人民党とその傘下組織がどのような手段・方策を使用してきたのか、という点であった。 本研究期間の前半から中盤にかけて、パリ和平協定後の30年間にわたるカンボジアの森林管理政策の展開とその現場での実施実態、さらにはそれらに影響を与えた国際舞台における関連諸政策とカンボジアでの国際開発援助動向について明らかにした。なかでも、後者の国際舞台での関連諸動向がカンボジアで現実の国際プロジェクトとしてどう事業化され、さらにどのように失敗したのかに照準・解明した研究とその成果は、これまでほとんど取り組まれることも、明らかにされたこともなかったものだった。 最も重要な国際プロジェクトがカンボジアで失敗した要因の一つに、国際社会内における開発援助理念の違い、イデオロギー対立が存在したことを解明したが、本研究期間の最終盤の昨年度は、カンボジアの森林管理を規定してきたそれらの対外的な要因に加え、上記のような重要な内的な要因を明らかにすることができた。
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