今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施した文献調査により、Kemena 川流域では、英国社会人類学者のE. リーチが「文化的遷移」(Cultural Drift) と称した山地民のイスラム化が現在も進行し、下流への移住ならびにBintuluへの向都移動を通して、山地民の改宗者と子孫からなるイスラム・コミュニティが形成されていることが確認された。「擬似マレー」(Para-Malay)と分類されたこれらの民族集団は、汽水域・沿岸部において人口を増大させている。同地においては、イスラム化したPenan集落があり、これに関して社会人類学者R. ニーダムが残した民族誌情報との比較調査が可能であることが判明した。更にBintulu 郊外の沿岸部では、Penan Islam、Penan Musimという行政村落名をもつ採集狩猟民を始祖としたイスラム・コミュニティの存在を確認している。これらの集落においては、移住史、親族関係などの基礎データに加えて、言語使用状況、内陸山地民コミュニティとの社会関係などについての聞き取り調査を実施する予定である。
Leach, Edmund 1950. Social Science Research in Sarawak: Report on the Possibility of a Social Economic Survey of Sarawak presented to the Colonial Social Science Research Council, Colonial Office. Needham, Rodney. 1965. Death-Names and Solidarity in Penan Society. Bijdragen tot de Taal-, Land- en Volkenkunde 121 (1): 58-75.
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