研究課題/領域番号 |
17K02018
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷川 真一 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40410568)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集合的暴力 / 中国 / 文化大革命 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国文化大革命(以下、文革)の集合的暴力に関する個別の事例研究を比較・統合し、体系的理解に到達することを目的としている。 H29年度は、2名の研究協力者をはじめとする国内外の研究者との意見交換を通じて、分析概念・枠組みの共有化の作業を推し進めた。数ヶ月間のメールを通じた意見交換を受け、11月下旬に北京で研究協力者のアンドリュー・ウォルダー(スタンフォード大学)と面談し、分析概念・枠組みについて詰めの議論を行った。その場ではまた、1)文革の暴力についての共同論文の執筆、2)同氏が現在執筆中の地方誌データを用いた文革のマクロ動態についての著書の原稿を研究代表者が事前に読み、コメントを行うこと、3)地方誌データのなかから内モンゴル自治区に関する部分の使用の承諾、について合意した。 次に2月6に、中国国内では文革研究の第1人者として知られる北京大学の印紅標氏を神戸大学に招き、「1966年の紅衛兵暴力と政策責任」と題する講演を行っていただいた。同講演の内容もさることながら、文革の集合的暴力に関する貴重な意見交換を行うことができた。加えて、文革の資料面での協力についても話し合うことができた。 最後に、本年度の最も大きな研究成果として、1月に査読付きの英文ジャーナル(WoS [SSCI]ジャーナル)であるModern China (Sage Publications)に論文(“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Armed Warfare in China’s Countryside: Shaanxi, 1967-1968”)を公表することができた。この成果は、今後海外の研究者との交流を活発化させるうえで役立つものと思われる、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の目標であった、研究協力者との分析概念・枠組みの共有化におおむねめどがついたことがその理由である。研究協力者との共同論文の執筆計画の具体化や、査読付き英文ジャーナルへの論文掲載など、研究計画の遂行と成果の公表の両面で、着実な進展があったといえる。加えて、当初計画にはなかった北京大学の印紅標氏との研究協力や、内モンゴルの文革についての地方誌データを用いた論文執筆など新たな可能性も開拓できた実りある1年であった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は以下の通りである。H30年度は、各事例の比較分析を通じた類似点・相違点の洗い出しを行う。この作業には、さらにインテンシブな研究者間の対話と議論が必要になることから、国内外での研究協力者との交流を進めていきたい。本課題の最終年度であるH31年度は、文革の集合的暴力に関する知見の体系的な統合を図る。個別の事例の比較検証を受け、ここでは研究成果の公表のための執筆・編集作業を通じて、それらの知見の体系化を図りたい。 具体的には、1)研究協力者のアンドリュー・ウォルダーとの文革の集合的暴力に関する共同論文の執筆と主要な英文ジャーナルへの投稿、2)地方誌データを用いた内モンゴルの文革についての論文を研究代表者が指導する博士学生と共同執筆することを通じて、文革の集合的暴力についての事例研究をさらに推し進めたい。そのうえで最終的には、文革の集合的暴力についての知見を集合的暴力研究への理論的・方法論的貢献へと結びつける試みを行い、公表論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初米国スタンフォード大学での研究協力者との打ち合わせを予定していたが、同研究協力者が北京滞在中に同地で打ち合わせを行ったため、渡航費・滞在費が予定を下回ったため。 次年度使用分は、当初の予定になかった11月にウィーンで行われる国際研究集会での報告に充てる予定である。
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