研究課題/領域番号 |
17K02018
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷川 真一 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40410568)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 文化大革命 / 集合的暴力 / 中国 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国文化大革命の集合的暴力に関する個別の事例研究を比較・統合し、体系的な理解へとつなげることを目的としている。初年度のH29年度には研 究協力者との分析概念・枠組みの共有化のための作業を行なった。H29年度の研究成果としては、1月に査読付きの英文ジャーナル(WoS [SSCI]ジャーナル)である Modern Chinaに論文 (“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Armed Warfare in China’s Countryside: Shaanxi, 1967-1968”) を発表した。 2年目のH30年度には、文化大革命の集合的暴力についての総合的・体系的な理解を促すことを目的として、分析枠組みの再構築に向けての作業を行なった。関 連する業績として、単著論文「『毛沢東独自路線』再考試論」(『近代』第119号、 2019年3月)を発表した。 最終年度となるR1年度には、個別の事例研究を統合した文化大革命の集合的暴力についての新たな分析枠組みを提示するための作業を行なった。関連する業績 としては、1「陰謀論として継続革命論、そして文化大革命」、石川禎浩編著『毛沢東に関する人文学的研究』京都大学人文科学研究所、2020年、275-302頁、 2監訳書(フランク・ディケーター著『文化大革命ーー人民の歴史1962-1976』人文書院、2020年)に書いた解説(182-191頁)を挙げることができる。 なお、最終年度のR1年度後半に大学業務が多忙であったことに加え、新型コロナウイルスの影響もあり、本課題の1年延長を申請した。さらにR2年度は一年を通じて海外での打ち合わせや資料収集を行うことができず、年度末に再度延長を申請した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の進展状況は以下の通りである。初年度(H29)から最終年度(R1)半ばまでは概ね順調に進展したが、最終年度の後半に大学業務が多忙になり、また 新型コロナウイルスの影響も加わり、本課題の1年延長を申請した。さらにR2年度を通じて海外での打ち合わせや調査ができず、最終的な研究成果の発表が行えなかった。このため、進捗状況を「やや遅れている」とした。 H29~30年度までの計画であった研究協力者との分析概念の共有化、 事例研究の比較分析を通じた文化大革命の集合的暴力の分析枠組みの再構築に向けての作 業は、概ね計画通りに進展した。具体的には、文化大革命の集合的暴力の発生・拡散のパターン、行為主体、プロセスとメカニズムなど、従来の研究では 明ら かにされていなかった新たな知見が明らかになった。加えて、集合的暴力の思想的背景についての考察にも一定の進展が見られた。研究成果の公表の面でも、こ れまでに査読付き英文ジャーナルへの論文掲載(“The Policy of the Military ‘Supporting the Left’ and the Spread of Factional Armed Warfare in China’s Countryside: Shaanxi, 1967-1968,” Modern China)、京都大学人文科学研究所の共同研究の成果である石川禎浩編著『毛沢東に関する人文学的研 究』への論文掲載(「陰謀論として継続革命論、そして文化大革命」)などの研究成果が得られている。 R1年度末からR2年度を通じて海外での調査や打ち合わせを行うことができず、最終的な研究成果の発表が遅れているが、今後はR2年度に開始した新たな科研費課題「中国文化大革命のフレーム分析」と統合する形で研究計画の練り直しを行い、R3年度中には本課題を完成させたい。
|
今後の研究の推進方策 |
再度の期間延長を認めていただいたことにより、新たな科研費課題「中国文化大革命のフレーム分析」と統合させる形で、R3年度中には文化大革命の集合的暴力に関する新たな分析作組の提示を行いたい。 これにあたり最も参考となるのは、研究協力者のアンド リュー・ウォルダー(スタンフォード大学)が2019年に出版したAgents of Disaster: Inside China's Cultural Revolution (The Belknap Press of Harvard University Press)である。同著は、中国の地方誌データを用いた文化大革命のマクロ動態についての最 新の研究成果であり、本研究課題とも密接に関連している。研究代表者は本年度末の3月に、神戸大学現代中国研究拠点、中国現代史研究会の協力を得て、ウォルダー氏にAgents of Disasterに関するオンライン・セミナーを行ってもらった。海外での打ち合わせや調査が依然として行えないなか、このような取り組みには一定の意義があったと考えている。 R3年度は、引き続き研究協力者のウォルダー氏との研究協力を進めながら、研究代表者の新たな科研費課題「中国文化大革命のフレーム分析」との統合を行い、中国文化大革命の集合的暴力についての新たな分析枠組みの提示を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度(R2)を通じて、新型コロナウイルスの影響で海外での打ち合わせや調査ができなかったため、再度の延長申請を行うことになった。R3年度も海外渡航の見通しは立っていないため、国外の研究協力者 との打ち合わせはメールやZOOMミーティングなどを通じて行う予定である。このため、新たな科研費課題「中国文化大革命のフレーム分析」との統合を含めた研究計画の見直しにより、残った研究費の使用を進めていきたい。例えば、文化大革命研究の重要な資料である紅衛兵新聞の電子化(PDF化)など、新たな科研費課題で実施している作業に本課題の残った研究費を振り向けるなどが考えられる。これは、新旧の科研費課題を統合することによって可能になるであろう。
|