研究課題/領域番号 |
17K02019
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
太田 和宏 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (00273748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィリピン / 労働 / 自由化 |
研究実績の概要 |
2018年度は主として都市部インフォーマルセクター労働者の実態に関する調査を行った。首都圏マニラの港湾近辺貧困地区トンドのBarangay118において、住民の生活条件、就業実態を含む聞き取り調査を行った。旧中心地区の一画イントラムーロスにおいては、露天食堂事業者、および事業主組合での就業と経営の実態について聞き取りを行った。労働雇用省DOLE担当官より、インフォマルセクターの自立的経済活動促進のための行政による方策についての情報を得た。 アブラ州においては協同組合形式で生活や就業を支えあうシステムについての情報を収集した。「アブラ教区労働者教員協同組合」ADTEMPCOでは労働者、農民、教員等複数の就業形態をとる人々を組織し、生産(農産物およびその加工品)、流通、金融などの経済活動を統合する形で相互支援のシステムを作り上げている。現在グローバル化が進行する中で労働分野での自由化が急速に進んでいるが、ADTEMPCOの取り組みはいわばそれに対する対抗的な実践例である。とはいえ、ADTEMPCOは単なる社会活動ではなく、むしろ一般市場の中でビジネスを展開しながら、そこから得られる経済的にメリットをより低所得困な人々へと還元しようとする点において新しい取り組みである。現今のグローバリゼーションと自由化をが進行する中で競争が激しくなり、雇用が不安定化し働く者にとって厳しい条件が生まれつつあることへの、ひとつの対抗的な実践であると言えるだろう。 研究成果としては労働者の生活を支える社会保障制度SSSに関して第4回フィリピン研究国際大会(広島)で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インフォーマル部門に従事する人々からの情報の収集に予想以上に時間を要したことと、研究計画作成時には得られていなかった協同組合形式の就業システムがフィリピンの労働状況を検討するうえで重要な視点を与えるものと判断したため、関連する情報の収集にも時間を要したために、当初計画よりも進捗が遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は計画上の最終年度である。いまだ収集できていない領域の情報を集中的に集める。例えば、労働調停システムの実態(制度的側面と実際の運用)、労働組合を含む労働者の主体的関与の実態等に関する検討を行う。 さらにこれまでの情報をもとに論文として成果をまとめる作業に時間をかけていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査を年間2回予定したところ1回のみ可能であったことと、現地で調査協力者を雇い入れる予定であったところ先方の都合がつかなかった。 今年度は短期であっても2度の現地調査を行うことと、調査協力者との調整を事前に行うことによって計画を遂行したいと考えている。
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