研究課題/領域番号 |
17K02023
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
星川 圭介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (20414039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合成開口レーダ / 天水田 / 生産安定性 / 農村発展 |
研究実績の概要 |
2017年度は4回の現地調査を行い,湛水頻度(≒生産安定性)に基づく水田分類手法の確立に向けた現地情報の収集を行った. 6月18日から21日にかけては対象地域のうちコンケンおよびナコンラーチャシーマにおいて打ち合わせおよび現地調査を行った.コンケンでは研究協力者であるコンケン大学の教員と打ち合わせを行った後,すでに合成開口レーダ画像を用いた水田分類が終わっている場所において土壌水分や湛水状況などの現地情報を収集した,またナコンラーチャシーマでは現地の土地開発局の職員からの情報により調査対象とする2地区を絞り込んだうえで,現地の概況視察を実施した. 9月には気象局において対象地域の気象データの入手を行ったほか,14日から15日にかけてナコンパノム県ホーンサワン郡およびシーソンクラーム郡において一日ずつ,農地の水文状況および農業生産状況に関する現地調査を実施した.ナコンパノムは年平均降水量が2000mm前後と湿潤なことに加え雨季の中盤であり,水田がおおむね湛水していたため現地農民からの聞き取り調査のみを実施した.この調査を通じ,ナコンパノムにおいては水田の湛水頻度はほとんど一様であることが明らかになった.またナコンパノムでは翌年3月にも現地大学教員との打ち合わせと補足的な現地調査を行った. 12月にはナコンラーチャシーマにおける上記対象2地区の水田において,土壌含水率とGNSS(全地球測位システム)キネマティック法による簡易水準測量とを実施し,微地形と土壌含水率の関係を示すデータを取得した.また周囲の村落で聞き取りを行った結果,「窪地の水田」と呼ばれる湛水頻度の高い水田は小規模河川沿いの低地にのみ存在していることが明らかになった.これは降水量が1000mm程度であるため直接降雨や地表面流入では田面の湛水が生じないためと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は2地域において現地調査を実施する予定であったが,3地域において現地調査を実施することができ,合成開口レーダ画像により水田を分類するにあたって有用な学習データを取得することができた.半面,ナコンラーチャシーマについては土地利用図の作成が完了しておらず,現地調査の進捗と相殺される形となっている.
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今後の研究の推進方策 |
ナコンラーチャシーマの他,すでに土地利用図が存在するコンケンを除く2地域について2018年度中に1950年代以降各年代の土地利用図を作成する.また,前年度に行った現地調査に基づき,水田の仮分類結果の精度検証を行うとともに,精度を向上させるために分類手法の改良を行う. 現地調査は2017年度に調査を実施しなかったスリンのほか,ナコンラーチャシーマとコンケンにおいても実施する.スリンでは多くの伝統的水田灌漑施設があることが研究代表者によるこれまでの研究により明らかになっており,本課題ではその受益範囲を合成開口レーダにより把握することを目的としているが,前回の調査時からすでに15年が経過していることから,今回の調査では伝統的灌漑施設の有無および施設からの河川水が流入する範囲について聞き取りおよび視察によって現状確認を行う.ナコンラーチャシーマとコンケンでは,雨季中盤(9月)の水田における湛水状況と土壌含水率を調査するほか,コンケンではGNSSを用いた簡易地形測量を実施する. 秋までに中間的な成果を取りまとめ学会で発表することを目標としている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初土壌水分計を購入する予定であったが,他の研究プロジェクトの土壌水分計を使用できることとなり,その予算が次年度に繰り越されることとなった. 繰り越し分は次年度の旅費として使用し,より緻密な現地調査を実施する.
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