研究課題/領域番号 |
17K02023
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
星川 圭介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (20414039)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 合成開口レーダ / 土壌水分 / 天水田 / 土地利用変化 |
研究実績の概要 |
対象地域における合成開口レーダ画像の解析を進めるとともに,その結果を評価するために9月14日~19日および3月22日~26日に現地調査を実施した. 合成開口レーダ画像の解析はナコンラチャシマ県北部とコンケン県北部を対象として行った.それぞれ2007年から2008年にかけての7時点および12時点の観測データを用い,各ピクセルにおける各時点の後方散乱係数を独立変数としてk-means法によるクラスタ分類を行った.この結果,いずれの地域でも雨期の間に後方散乱係数の低下を示すクラスタと雨期を通じて後方散乱係数が増加し続けるクラスタの大まかに2通りのクラスタが形成された.前者は地形的に湿潤なため雨期の間に水面を生じているものと推測された. 雨期である9月の調査では水田の状況を主に地域住民からの聞き取りと目視により調査した.コンケン県北部では聞き取りによって比較的湿潤な低位水田と乾燥した高位水田の分布図を作成した.また伝統的灌漑が発達してきたスリン県では伝統的灌漑の現状を調査した結果,調査直前に政府による治水対策事業が実施され,伝統的灌漑の多くが撤去あるいは近代的水利施設に置き換えられたことが明らかになった.また東北タイの北東端に位置して降水量が多いナコンパノム県では地形的立地条件にかかわらずほとんどの水田で湛水状態となっていることが確認された. 乾期の3月においては,9月に調査を行ったコンケン県北部および前年度に調査を行ったナコンラチャシマ県北部において全球航法衛星測位(GNSS)を利用した地形測量を実施し,クラスタの空間分布と地形の関係を精査した.この結果,地表水の集まりやすい少しくぼんだ地域において雨期における湛水の特徴を示すクラスタが分布しているなど,両者が良く対応していることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地調査も予定通りに進行しており必要なデータも得られている.本課題の目的の一つである点水田の分類手法の確立についても30年度中に概ねめどが立った.
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今後の研究の推進方策 |
GNSS測量による地形情報とクラスタリングの結果の詳細な比較検討を進め,湿潤度に応じた水田分類が行われているか妥当性を評価する,またRandom Forest等,学習データを用いたより精度の高い分類手法の適用可能性についても検討する.現地データについてはこれまでの調査により蓄積が進んでいるが,年度中に一度,分類の精度評価に必要な地形や土壌含水率に関するデータの収集を補足的に実施する.これらにより湿潤度に応じた土地の分類手法が確立した段階において各地域における湿潤度分類図を作成する. これに加えて各年代の水田拡大過程に関するデータの整備も行う.2000年代についてはすでにデータが座標を有する形で得られているが,1950年代についても当時の地形図に基づく水田分布データの整備を行う.また20世紀初頭についても地図が整備されている地域においては同様に水田分布データを作成する. 上記2種類の空間データを用いることにより各年代においてどのような条件の土地に水田が広がっていたかを明らかにし,各年代・各地域におけるコメ生産の安定性を推定する.これに先の基盤研究等における現地聞き取り調査で得られた各地域の生業史に関する情報を重ね合わせることによって,本課題の目的である東北タイ各地域における農業の歴史的発展経路の再評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行った出張の旅費精算による不足を避けるために若干の余裕をもって執行を行ったことにより2万円余りの次年度使用額が生じた.翌年の謝金等に用いる予定である.
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