研究課題/領域番号 |
17K02025
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
阿部 拓児 京都府立大学, 文学部, 准教授 (90631440)
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研究分担者 |
田中 英資 福岡女学院大学, 人文学部, 准教授 (00610073)
守田 正志 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (90532820)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アナトリア / トルコ / ヘリテージ / 都市文化 / 物質文化 / ミュラ / パタラ |
研究実績の概要 |
平成30年度は国内における2度の研究会と現地における1回の合同調査をおこなった。6月16日(土)に福岡女学院大学にて本科研第3回目の国内研究会をおこない、科研費研究会メンバーより、「考古遺跡とその周辺に暮らす人々:セルチュクとゲレミシュ」(田中英資)と「ストラトニケイアの古代」(阿部拓児)の二つの報告がなされた。その後、夏に予定されていたトルコにおける合同調査の詳細な日程を話し合った。トルコにおける合同調査は8月28日(火)から9月8日(土)の日程で実行された。まず、南部アンタルヤ県カシュ市を拠点に、デムレ(ミュラ)、アンドリアケ、キュアネアイなどの遺跡および周辺地域に広く散在する中世の教会遺構(デレアウズ教会など)を踏査した。次いで、同じくアンタルヤ県のゲレミシュ村に拠点を移し、クサントス、レトゥーン、パタラ、ピナラの遺跡および20世紀初頭のギリシャ=トルコの住民交換によって廃墟となった、旧ギリシャ系住民の村落カヤキョイを調査した。レトゥーンでは、遺跡発掘の責任者であるセーマ・アティク・コルクマズ教授(バシュケント大学)と面識を持ち、今後の研究における交流および協力を約束した。最後にムーラ県の県都ムーラ市に移動し、カウノス、ストラトニケイア、エウロモス、ミュラーサの遺跡および周辺の宗教施設を調査した。帰国後の2019年3月16日(土)には京都府立大学にて研究会をおこない、合同調査とその後の文献調査によって得られた知見を報告、意見交換したのち、今後の研究会の活動計画について話し合った。研究会における報告題目は以下の通りである。「近年発見のカリアの王族墓2基とその真正性」(阿部拓児)、「トルコ共和国ディルゲンレル(Dirgenler)村近郊のデレアウズ(Dereagzi)に残る中世ビザンツ教会堂の調査報告」(守田正志)、「ゲレミシュ村の人びととパタラ遺跡の関係」(田中英資)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究はおおむね順調に進展していると評価される。その最大の理由は、平成30年夏におこなわれた研究会メンバー全員による合同の現地調査が、当初見立てた計画どおりに遂行できたことにある。8月28日(火)から9月8日(土)にトルコのアンタルヤ県、ムーラ県でおこなわれた調査については、6月16日(土)に福岡女学院大学で開催された研究会において可能な限り綿密なスケジュールを準備した。しかし、そのなかには現地に行かなければほとんど情報を得ることができなかった、ピナラやキュアネアイなどの遺跡や、デレアウズなどの中世教会建築遺構などの調査も含んでおり、実際の日程は現地に到着してから調整していかなければならないと予想されていた。しかしながら、現地の状況に詳しい地元ガイドによる案内を得ることによって、さほどのトラブルに見舞われることなくスケジュールどおりに行動できた。また、当初の予定では時間に余裕が生じた場合にのみ赴くとしていた複数のサイト(カウノスやカヤキョイ)もすべて調査することができた。さらには聞き取り調査の相手や滞在先のホテルとも良好な関係を築くことに成功し、次年度以降の調査をスムーズに遂行するための足掛かりを築くことができた。とりわけ、バシュケント大学のコルクマズ教授との交流は、今後の研究の発展にとって予想外の収穫であった。帰国後には、当初の予定には組み入れていなかった4回目の研究会を開催することにより、調査によって得た見解を研究会のメンバー間で共有し、次年度の調査に積み残した課題についても確認し合うことができた。以上のような理由から、冒頭のような自己評価を下すに至った。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、本科研の報告書の刊行を最大の目標とする。過去2年間の現地調査にもとづく報告書原稿については、書き上げた順にメールで回覧し、意見交換をする。そのうえで6月末にいったん締め切りをもうけ、原稿を集約したのち、7月中・下旬に横浜国立大学にて編集会議をおこなう。その会議の場で欠落した視点や各章間の矛盾点などを洗い出し、原稿の修正および再募集をかける。以上のような工程をへて、「京都府立大学文化遺産叢書」の1冊として、年内の刊行を目指す。それと並行して、昨年度末の研究会において、調査の不十分な点もいくつか指摘されたため、比較的短期間を想定しながらも申請当初の計画には組み込まれていなかった最終年度の追加現地調査もおこなう。また、研究開始当初に予定されていたシンポジウムであるが、研究会メンバーの1人が研究専念期間に入り1年間日本国外に居住するため、今年度の開催は実質不可能となった(本科研の研究期間終了する来年度以降に見送る)。したがって、今年度は国内研究会も開催せず、現地調査の旅程調整や研究会の今後の活動計画については、ネット会議および夏の現地調査の折に話し合うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
トルコの経済状況の悪化が継続している。そのため、トルコリラ安によって当初の試算のよりも安くなったため、2018年8月から9月にかけて実施した調査旅行の旅費を抑えることができた。2019年度夏にトルコへの現地調査を実施する準備を進めているが、2019年度は今年度よりも交付される研究費の額が少ないため、その不足分に充当する予定である。
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