研究課題/領域番号 |
17K02027
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研究機関 | 広島国際学院大学 |
研究代表者 |
川越 道子 広島国際学院大学, 情報文化学部, 准教授 (70617068)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国人技能実習制度 / 移住労働 / 労働力輸出 / ベトナム / 村落社会 / 農村の工業化 / 環境汚染 / 部落問題 |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、予定していた国内外での現地調査を実施できなかったが、これまでの研究成果の一部を論文とコラムにまとめて出版した。また、国際労働力移動にかかわる論文や文献を読み込み、理論的枠組みを検討しながら調査で得られた資料やデータの分析を行った。さらに、オンラインで行われた研究会やワークショップに参加し、本課題の成果の一部を発表するとともに移民研究をはじめ他の関連分野の研究者と意見交換を行い、最新の研究動向を把握した。これより、主に以下の成果が得られた。
1.近年のベトナム人技能実習生の増加は、日本とベトナムの「経済格差」に起因すると理解されることが多い。しかし、技能実習生の送り出し国を「開発途上地域」と一枚岩に捉える本質主義的な従来の理解が、労働問題や人権侵害を引き起こす一因になっていることを確認できた。多くの技能実習生の故郷であり、現在、工業化という大きな社会変容を経験しているベトナム北部の農村は、「開発途上地域」というよりむしろ「新興地域」と呼ぶにふさわしい状況にある。こうした農村の工業化が移住労働を促している現状、およびそうした社会変容に伴う村民の意識の変化が、聞き取り調査のデータから明らかになった。 2.近年の移民研究における「放逐」という概念が、北部農村の工業化だけでなく、2016年にベトナム北中部で発生した海洋汚染を契機に増加した同地から海外への移住労働の状況を検討するのに示唆的であることを確認できた。 3.部落研究を専門とする研究者との研究交流を通して、現在、外国人技能実習生が包摂されている労働市場に内在する差別構造を明らかにするために、部落研究をはじめ、周辺化された労働市場をめぐる従来の研究成果に学び、学際的な視野から調査研究を行う重要性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、これまでの研究成果の一部を論文にまとめることができた。しかし、2020年3月よりベトナムへの入国制限措置が取られていることから、ベトナム現地調査を実施できなかった。また、国内においても、予定していた調査先が高齢者の多い地域であることから、国内調査の時期を先送りすることにした。そのため、やむをえず研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、安全で安心な調査が可能と判断できた時点で、最終的なベトナム現地調査と国内調査を実施する。同時に、次年度も海外に渡航できない可能性も踏まえて、ベトナムの調査協力者と連絡を取りながら、メールやインターネットを通じてデータ収集や聞き取り調査を行うことを試みる。次年度は本課題の最終年度であることから、これまでの調査を補完し、充実した成果が得られることを目指して調査を行う。また、引き続き、これまでの調査研究で得られたデータをもとに論文を執筆し、国内の研究会、学会で研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、国内外での現地調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。使用できなかった旅費、人件費・謝金は、次年度の旅費調査費に充当する。
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