今年度も新型コロナウイルスの感染拡大の影響が続いたため、当初の研究目標・手法の大幅な変更を余儀なくされた。それゆえ昨年 度の研究の継続として、占領期の日本における白人(白人アメリカ人)をめぐる認識や受容の歴史に関する文献調査を行った。エドウィ ン・ダン記念館(札幌市、4月)、福岡県立図書館(福岡市、6月)、国立民族学博物館(吹田市、6月)、札幌市中央図書館(札幌市、8 月)、京都大学附属図書館(京都市、12月ならび2月)、沖縄県立図書館(那覇市、3月)などを訪れ、当時の一次資料を調査した。科研費に関しては繰越残高を利用して京都府立図書館(京都市左京区)にある視聴覚資料『終戦直後・占領下の映像記録』(全132巻)の閲覧し、占領下の京都における対米認識に関する基礎データを収集することができた。人種と権力の非対称的な関係性を新植民地主義的な文脈で捉える理論的潮流に異議を唱えるうえで有益な資料であり、構造決定論と主体行為論の弁証法的理論展開を再考するうえ重要な資料となることが期待できる。白人ナショナリズムをめぐる動向はメデ ィアの関心も高いが、センセーショナルな側面が強調されがちである。しかし、白人優位の考えとその裏返しとしての他者蔑視の眼差し を理解するうえでは、歴史的理解が不可欠である。コロナ禍そのものは研究にとって大きな障壁となったが、それまで軽視していた歴 史的側面の理解が深まったという点では貴重な機会となった。
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