研究課題/領域番号 |
17K02039
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
深津 裕子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (20443145)
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研究分担者 |
川井 由夏 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (70407815)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エコツーリズム / サステナブルデザイン / 西表島 / 染織資源 / 芭蕉 / 利活用 / 伝統工芸品 / テキスタイル |
研究実績の概要 |
西表島のエコツーリズム、経済事情、環境保全、植物資源、文化資源、未利用資源などの現状を把握するための聞き取り調査を行い、素材開発 、試作の作成、展示公開までに至り、当初の研究計画よりも前倒しの研究活動となった。 国際自然保護連合が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産への登録を目指すことから、島では住民レベルで自然環境保護に関する勉強会が頻繁になされていた。住民の世界自然遺産に対する知識や認識はまだ低く、多くの課題を抱えているようであった。しかし本研究を通して、デザインが自然資源や文化資源の利活用のための糸口になる可能性が示唆された。 具体的には西表島に在住する研究協力者より具体的な植物資源(ヤシの葉、芭蕉)の利活用に関する提案をうけた。ヤシの葉については次年度に検討することとし、平成29年度は芭蕉を対象に研究を行った。本研究では、伝統的な芭蕉布の糸を作成する際に廃棄される部分の利活用を考えることにした。まず島内での伝統的な敷物、籠、帽子などの製作方法について把握した上で、伝統的な手業を活用しつつ新しいデザインのものづくりを目指し、①敷物、②籠、③帽子をとりあげ、芭蕉から得られた素材で試作した。敷物は本来、米を収穫後の藁で作られたが、廃棄される芭蕉の外皮を活用した。籠は、構造を作るための若干の技術が必要とされるが、鉄製バスケットと芭蕉の外皮を組み合わせたものとした。帽子は菅笠のようなものが伝統的にはあるが、外皮を細くさいて編んだものを縫製する麦わら帽子の技法を採用した。 試作品は、2017年10月に多摩美術大学アートテークギャラリーで研究者らが企画した「手の記憶/自然との共生Part2 アジアの布 伝統から革新へ」の「植物と暮らす」の章で展示し、第三者からの評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成29年度は基礎調査を行い、試作品は次年度に作成する予定であったが、協力者より研究対象とする素材の具体的な提案を受け、芭蕉を選定したことから、具体的なものづくりへと発展させることができた。素材の調達や前処理などは地域の住民に委託し連携することができ、テキスタイルプロダクトをデザインするまでにいたった。また研究者らが企画した展示に本研究の途中経過を展示することができたため、第三者からの評価を得ることもできた。 しかしながら、機器備品として購入予定しているバナナ繊維抽出機のインドからの発送が遅れ、未だ到着しないため、機械を活用した素材開発については研究が遅延しており、次年度に繰り越さねばならなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は引き続き地域特有の素材を研究の対象として、素材開発と試作を行う一方で、テキスタイルプロダクトのエコツーリズムにおける利活用を検討するために、地域の観光産業に従事する人たちとの連携を深めていきたい。 遅延しているバナナ繊維抽出機については再度問い合わせを行い現状を把握し、が到着次第、機械を使った繊維の抽出方法と素材開発に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度使用額が生じた理由は、当初、平成29年度内にインドからバナナ繊維抽出機が納品される予定で、予算計画をたてたが、納品が大幅に遅延しているため、通関手続き費用や、周辺機器などの支出予定が平成30年度以降に繰り越しとなったためである。 今後の使用計画は、残金はインドからバナナ繊維抽出機が納品され次第、通関手続き費用および周辺機器などに使用し、遅延している芭蕉繊維の機器を活用した素材開発を行う予定である。 平成30年度助成金は、物品費として素材開発と試作のための染色・紡織用具や植物繊維(10万)、西表島での調査旅費(60万)、人件費・謝金として専門知識の提供や資料整理、植物繊維採取(16万)、その他交通費、印刷費等の雑費(4万)として使用を予定している。
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