研究実績の概要 |
最終年度は、パンデミックという特殊な情勢下において、オンラインを駆使して、下記二点に注力した。 第一点目は、昨年度に延期となった国際交流の場を再設定するなどして、本研究の成果を国内外の学界で積極的に発信しようとしたことである。東京、ソウル、台北、南京、上海との学術交流の場において、1950年代から1970年代の中国・香港・台湾の政治思想上の動向が1940年代以前の中国情勢および1950年代以後の冷戦構造とどのように結びついているのかを検討した。この二つの視点をバランスよく含めることの重要性は従来さほど意識されてこなかっただけに、今後の新たな研究の発展の可能性を海外に向けて広くアピールできたのではないかと考えている。 第二点目は、この第一点目の成果を、中国語による口頭報告のみならず、英語による研究論文としても発信しようとしたことである。具体的には、本研究の四年間の成果のエッセンスを抽出した、”Libelalism in Hong Kong and Taiwan during the cold war”( Modern Asia Studies Leview, Vol.12, 2021予定)を準備した。 最終年度は、国内外を問わず、自由な移動が制限されたため、元来予定していた研究計画のすべてを実行できたわけではなかったが、想定していた研究目標には到達できたと考えている。ただし、この四年間で得られた知見が1980年代の中国の政治思想情勢といかに関連しあっているのかについては、その一部が見えてきたに過ぎず、今後の課題とせざるを得なかった。この研究課題は、改革開放期の中国を中国近現代史という長期的なスパンで定位し直す際に、重要な論点となってくる。
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