研究課題/領域番号 |
17K02042
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
王 雪萍 東洋大学, 社会学部, 准教授 (10439234)
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研究分担者 |
山影 統 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 講師(非常勤) (60766690)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本 / 外交官 / 中国 / 外交 / 人材育成 / 日中関係 / 外交部档案 / 廖承志 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国外交部の人事制度と外交官の育成方式を明らかにすることである。特に、中国外交部人事制度の日中関係への影響を主軸として分析するために、外交部の日本外交を担当する外交官の育成方法を中心に調査する。 2018年度では、前年度に引き続き、中国政府の元外交官や外事業務担当者へのインタビューを行いながら、収集した資料の整理、分析を進めた。中国外交部では、1949年成立時から対米、対ソ外交を重視していたため、外交部内のエリート官僚は、対米、対ソ外交に起用することが多かった。逆に1972年まで対日民間外交の政策を重視していたため、中国の対日外交の実務は、外交部より廖承志と国務院外事弁公室の日本組が長期間担当していた。そのため、外交部の対日外交担当者の選抜はそれほど重視されずに、日本の政治、社会事情を熟知していた帰国華僑や留学生が、対日業務現場で多く起用された。1950年代後半から日本情報の分析レベルの向上も確認されたが、1972年の日中国交正常化により、中国の対日外交は外交部に移行された。中国外交部の官僚を選抜、育成する重点は、共産党への忠誠心と語学レベルであった。ゆえに外交部の対日外交担当者は、日本事情を熟知する日本留学経験者よりは、大学の日本語専攻の卒業生から選ばれることが多かった。その結果、対日外交実務が外交部へ移行すると、それまでのように日本の社会状況、文化を理解した上で対日外交を行うことができなくなった。本研究は中国の対日外交の外交部への移行による、今日の日中関係への影響も分析した。昨今、日中関係における問題が発生するたび、日中両国政官界のハイレベルなパイプ役がいないことが問題視されている理由としては、日中国交正常化後、中国の対日外交政策指導体制と担当人材の変更にあると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は中国及び日本の公開・非公開資料の収集・整理、及びそれら資料に依拠したオーラルヒストリーの実施を主たる研究手法としているため、中国人研究者との国際共同研究が不可欠である。2017-2018年度では、日中双方のメンバーは日中両国及びオーストラリアで研究資料の収集、インタビュー調査の実施をおこなった。またすでに収集された一部の史資料は、テーマ別及び時系列的に整理・分類した上で、PDFファイルとして保存し、データベース化した。2018年度では、これらの研究資料の共有を行い、研究会も開催した。しかし、一部実施する予定であった元外交官のインタビュー調査は、本人の体調不良により延期が余儀なくされ、2019年度で引き続きその調査を行う予定である。また、インタビュー調査した結果のテープ起こし作業や収集した資料の整理作業は、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、資料整理・調査以外にも、資料分析、インタビュー調査、事例研究に重点を置き、学生研究補助者を追加して、これまでに整理、収集した資料・インタビュー記録の分析とデータベース化を行う。そして史資料のデータベース化作業は継続し、本研究に参加する全ての研究者に共有する。さらに、収集した史資料を利用して行った研究成果を外部研究会等で報告し、日本の中国外交及び日本外交史の研究者からのフィードバックを得る。他方、ワークショップを開催し、本研究の分析結果及び事例研究の内容分析についての報告と討議を行う。ワークショップの開催と並行して、本研究の調査分析の結果に基づく研究報告の公刊を準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の研究費は55万円ほど残っていた。それは予定していたアルバイト謝金と旅費である。これまでは資料収集、整理と分析がやや遅れているため、予定していたインタビュー調査の実施が延期され、そのテープ起こしの作業も遅れている。また予定していた外交部档案の収集作業も、档案の公開は再開されたものの、公開された資料が以前より少なく、予定していたすべての資料収集ができず、アルバイト学生による史料の複写も少なかった。さらに収集した史資料のデータベース化作業も少し遅れたため、予定していたアルバイト謝金の支出が少なかった。次年度では、外交部档案館では公開していない資料の補完として、地方档案館の外事関連档案の収集をより多く行い、必要な研究資料の収集を完成させたい。
(使用計画) :謝金・人件費:30万円、物品費:15万円、コピー代:10万円
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