本研究の最終年度であるため、1908年から40年代初頭に日本~ブラジル間に就航した移民船の越境的性格と教育・文明化の機能を、船会社・移民関連団体の広報誌記事や移民船客の記憶・体験を通して解明するという目的の達成に向けて、次のように、研究全体の総括と追跡調査を実施した。 1) 2019年度までに国内外で得られた①インタビュー・ライフドキュメント資料、②文献資料の整理と分析。 2)『「越境的空間及びメディアとしての移民船をめぐる文明史的研究」成果報告書』(2020.3)の関係機関やインフォーマントへの配布と同書を研究資源としての追跡調査(新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、主に電話やEメール利用)。 3)1)2)を反映させた上で、『海事史研究』、『移民研究年報』、翰林大学日本学研究所編『帝国と国民国家:人・記憶・移動』など、国内外の学会誌・研究叢書における研究成果論文の発表。 さらに、本研究において現在までに明らかになった移民船航海をめぐる文明史的研究の問題点を整理・分析し、本研究で得られた国内外のネットワークを活用、より広い視野と国際的な連携を通じて、後継的プロジェクト「近代日本人のグローバル移動と動植物交換をめぐる文明史的研究」(科研費基盤研究(B)、研究課題/領域番号:20H04413、代表:根川幸男)を企画。2020年度より同プロジェクトを開始した。
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