研究課題/領域番号 |
17K02044
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
間瀬 朋子 南山大学, 外国語学部, 准教授 (80751099)
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研究分担者 |
小池 誠 桃山学院大学, 国際教養学部, 教授 (00221953)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 教授 (20324676)
合地 幸子 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (60836542)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海外出稼ぎ / 帰還移民 / 漁船員 / 水産加工業 / 技能実習生 / インドネシア / 台湾 / 地域研究 |
研究実績の概要 |
4人のメンバーは、インドネシアの移民(海外出稼ぎ者)送り出し地域と、日本と台湾という移民先の双方にて、漁船員や水産加工分野技能実習生として働くインドネシア人に対する聞き取り・観察、資料の収集を実施した。主要調査地域は、インドネシア・中ジャワ州トゥガル県周辺とバリ州、台湾・屏東県と宜蘭県、日本・千葉県銚子、茨城県波崎、宮城県気仙沼であった。 移民送り出し地域では、外国籍漁船での就労経験者だけでなく、その親族や隣人に聞き取りを実施し、世界中に広がるかれらの出稼ぎネットワークを知り、国際状況などに応じて移民先が次々に移り変わっていくようすを確認した。移民先のひとつである台湾・屏東県では、インドネシア人漁船員やかれらが同地に建築したモスクの関係者に対するインテンシブな聞き取りをつづけている。さらに、台湾・宜蘭県で漁船員として働くインドネシア人に対して、またかれらを相手に商売をするインドネシア商店に関する聞き取り・観察を開始した。日本の波崎、銚子、気仙沼にて女性水産加工分野技能実習生との交流を継続するなかで、かのじょらの来日の経緯・行程、来日後の生活、日本で構築しているネットワークのほか、人生観や結婚観を明らかにした。波崎においては、漁船員・漁業技能実習生を対象として、日本を移住先として選択した理由や日本行きの条件などについての聞き取りを実施した。 共同研究としての問題意識を確認し、各人の研究成果を共有するための研究会は1回の開催にとどまったが、メンバー2人が台湾で共同調査を開始した。また、平成30年末のインドネシア研究懇話会で、メンバーのひとりが「インドネシア人海外移住労働者が構築するネットワーク―日本の水産加工分野で働く女性たちに注目して―」と題する報告を、別のふたりが「インドネシアにおける移民労働の社会経済的意味―台湾に向かう漁船員の事例―」と題するパネル発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会の開催は一度だけだったが、共同調査や共同発表を実現させることができた。さらに、メンバーはそれぞれの調査地で聞き取り調査と資料の収集を進め、小さな発見を積み重ねた。インドネシアの移民送り出し地域で調査をするメンバーと移民先で調査するメンバーが協力して、たとえばインドネシア・中ジャワ州の特定地域から台湾南部に漁船員として出稼ぎに行く人びとの実態に迫ったことは、共同研究としてのダイナミックな成果である。 【研究実績の概要】で述べたとおり、それらの活動成果を整理し、本研究課題の中間報告としてインドネシア研究懇話会で発表することができた。報告に対して、分野をこえた複数の研究者から今後につながる有用なコメントを得られた。これらを踏まえて、フィールドで集めた情報や資料から得た分析に磨きをかけられたことで、本研究課題の最終年度となる次年度の研究調査の方向性や調査事項を明確にした。 このように、フィールドでの調査を着々と進め、インドネシア人漁船員・水産加工労働者たちからみえる「新しい」移民像を提示することに手ごたえを感じはじめているにもかかわらず、それを論文や研究ノートなどにした形式による成果公表に乏しかったことを猛省している。
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今後の研究の推進方策 |
水産加工分野女性技能実習生に関する調査研究には、一段落ついた。銚子、波崎、気仙沼でのかのじょたちへの観察は継続するが、今後は漁船員技能実習生へと徐々に調査の重点を移す。台湾におけるインドネシア人漁船員の調査をいっそう進め、かれらの出身地(=移民送り出し地)での調査と組みあわせて、さらなる学術的な発見をめざす。メンバーは日本、インドネシア、台湾にて各自の役割にもとづいたフィールド調査を実施する。とりわけ、台湾で移民労働をするインドネシア人漁船員の渡航連鎖のパターンと、かれらのインドネシア帰国後のキャリア形成に力点を置いて、それぞれが各地でフィールド調査を継続する。 次年度に実施予定のフィールド調査は以下のとおりである。(1)インドネシア・中ジャワ州とバリ州にて、日本や台湾の漁船に乗り込むインドネシア人漁船員に関する調査を引きつづき実施する。(2)台湾・屏東県にて、インドネシア人漁船員やかれらによって建設されたモスクについての調査を深める。宜蘭県では、インドネシア人漁船員のほかに水産加工労働者にも聞き取りを実施し、あわせてインドネシア商店を調査する。(3)日本国内において、水産加工分野のインドネシア人技能実習生に質問票をつかった聞き取りを実施する。漁業分野のインドネシア人技能実習生や漁船員(主に沖合漁業)への観察にも本腰を入れる。 本研究課題の最終年度になる次年度には、各メンバーの研究結果を共有し、研究課題をまとめあげるための年2回の研究会にくわえて、外部コメンテーターを交えたセミナーを実施する。メンバー以外の研究者、インドネシア人・台湾人研究者とも積極的な学術交流を図り、研究課題の深化と成果の広がりをめざす。なによりも、各種学会での発表や学会誌に投稿する論文などの執筆をつうじて、研究成果のアウトプットに尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本年度の研究調査において各メンバーがアシスタントや通訳を雇わずにフィールド調査を実施し、フィールド調査後の記録起こしやその翻訳もみずからおこなったことで、人件費や謝金という形での支出が大幅に抑えられたことにある。 本研究課題の最終年度となる次年度には、よりインテンシブなフィールド調査を実施するために協力を依頼するアシスタントへの謝金・人件費のほか、研究会やセミナーにゲストスピーカーを招へいする際の謝金などとして、本年度に残った額を使用することを計画している。
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