研究実績の概要 |
【最終年度】研究代表者は前年度末に加害者側のスルプスカ共和国政府が立ち上げた国外の委員9名からなる独立国際調査委員会の委員に任命され、世界8カ国の研究者らと本課題の目的に資する多角的な共同研究を行った。同時に、この委員会に対する関係国政府、遺族、メディア、研究者など多方面からの反応を受け、その分析・考察を通し最終年度の計画であったinternational な次元における事件の評価を行った。年度末には総括となるシンポジウムを開催した。 【事業期間全体】19年度は遺体の遺棄地を含むスレブレニツァ事件の発生地点において、近隣住民や犠牲者遺族ら関係者の聞き取りを行い、20年度はボスニア及びセルビア、クロアチアにおいて、関係者の聞き取りと情報収集を行った。同時にICTY職員、公判中の被告の弁護団、刑期を終えた元被告らへのインタビューを実施した。また閉廷間際のICTYにおいてムラディチ被告の第一審判決を傍聴し、遺族や関係者の動向・報道のされ方、地元での反応などの分析・考察を行った。 この結果スレブレニツァ事件は、当初の分析視角であったlocal/regional/internationalという3次元の現実世界における相互作用にとどまらず、事件を対象とした歴史・地域研究、国際刑事法(裁判)と国際法学、国連平和維持活動と国際政治学といった複数の学術領域に甚大な影響を及ぼし、また各領域が重層的に関わり合い、さらに現実社会や政治と学術研究とか相互作用を重ねつつ、現在に至る歴史を刻んでいることを確認した。 本研究を通じて得られた知見と成果は、シンポジウム「25年目のスレブレニツァ~ジェノサイド後の社会の相克と余波、集合的記憶」(20年1月12,13日開催)を通じ広く一般に公開した(日本各地から延べ250名強の聴衆が参加)。シンポジウムの成果は、2020年度上半期に書籍として出版予定である。
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