研究課題/領域番号 |
17K02046
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
黄 盛彬 立教大学, 社会学部, 教授 (50308095)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / 中国認識 / 他者認識 / ナショナル・アイデンティティ / 新型コロナ / 韓国 / 台湾 / 言説分析 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本、韓国、台湾における中国・中国人認識の比較研究である。それぞれの国・地域における地政学的空間(世界)認識、他の周辺国への認識(イメージ・表象)との相関・影響関係、及びナショナル・アイデンティティの構築との関連で、中国認識の形成・変容、そしてその影響のあり方を解明することを目的としている。そのため、メディア・社会言説を分析し、またアンケート調査、質的インタビュー調査を通して、中国・中国人に関する認識の形成・浸透のメカニズムを明らかにし、共通点や差異を探る研究作業に取り組んでいる。これまで、1)関連の先行研究の整理及び分析を行いつつ、各種の世論調査結果などを収集し、時系列及び相関・影響関係を解明する作業 2)学術論文および世論調査の主題、内容、アプローチ、そしてキーワードへの分析を試みるメタ分析 3)関連のメディア言説のデータセットを用いて分析作業に取り組んできた。2020年度においては、これまでの研究作業の取りまとめとして、先行研究のレビュー及び1990年代以降の中国・中国人言説に関する言説分析の結果を論文としてまとめる執筆作業に取り組んだ。また、「新型コロナウィルス」のパンデミックの関連報道及び言説に関する比較研究に着手することになり、日本、韓国、台湾における主要メディアの報道及び論評、そしてインターネット上の言説を集め、分析のためのデータセットを作成した。そのほか、映画、テレビドラマなどのポピュラーカルチャーの領域における「中国・中国人認識」に関する表象・言説を収集し、分析作業に着手した。また、ソウル、台北の研究協力者と協力し、アンケート調査(ウェブで実施予定)及びインタビュー調査のための調査設計について協議を行い、調査設計を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象の国・地域における学術論文データベースを利用し、関連の研究論文の収集を行い、分析を行ってきたが、その過程で、研究のテーマ、内容、キーワードなどについてのメタ分析を加えることを研究作業の新たな軸とすることになった。そのため、研究の前半で一段落する予定であった先行研究の整理および分析作業が想定より長引くこととなった。各種メディア、世論調査機関、政府関連機関による中国・中国人認識に関わる調査についても、同様にメタ分析の手法を用いて、さらに分析作業を続けることにした。主要新聞の記事データベースからのキーワード検索を用いる分析データの収集を行い、様々な「データーセット」を作成したが、質的分析のソフトウェアを用いる分析に加え、計量的言語分析も導入して、その分析のためのデータセットも構築する作業に取り組んだ。計量的な言語分析の手法を用いて、研究テーマに関する量的または頻度の把握を試み、それを質的な分析における焦点化およびキー概念の抽出にも役立つことが狙いである。先行研究・調査の収集分析、メディアデータ分析の作業を集中的に行い、さらに新たに分析手法を加えることで、当初の予定よりやや遅れることとなった。具体的には、インターネット上の言説分析と、アンケート調査および質的なインタビュー調査である。現在まで研究協力者との打ち合わせを重ねてきたが、新型コロナウィルスの発生・拡散により、調査を実施することができない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究作業の取りまとめとともに、研究成果の発表に集中的に取り組む。現地での深層インタビューについては、現地調査の可能性を模索し、代案的な方法を講じつつ、オンラインミーティング形式でグループインタビューを行う。研究成果として、まずは、先行研究および調査に対するメタ分析の結果及び各種データセットを用いた分析論文を発表する。また、これまで構築してきた「データセット」を用いて、計量的言語分析および質的言説分析を併用する分析作業についても、成果のまとめを行う。また、文学作品、映画、テレビドラマ、漫画・アニメといったポピュラーカルチャーに表れた中国・中国人認識に関する質的分析の結果も、学会発表、論文として発表していく。以上の調査研究の成果を、学術論文(日本語、韓国語、英語)として公表し、最終年度には単行本としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで主に関連の先行研究の整理及び分析と、メディアデータの収集に集中的に取り組んだ。当初の計画より、現地での調査実施に遅れが発生していたが、新型コロナウィルスの拡散により、現地での打ち合わせや調査実施が実施不可能となった。そのため、研究成果の発表にも遅れが発生した。次年度には、現地での調査が本格的に実施される予定であり、またウェブ上のオンラインミーティングやインタビュー調査などの実施のための準備のための経費も確保する必要があり、次年度使用額として変更することが望ましいと判断した。
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