本研究は、日本、韓国、台湾における中国・中国人認識の比較研究として、それぞれの国・地域における中国認識の形成・変容、そしてその影響のあり方を解明することを目的として、メディア・社会言説を分析し、アンケート調査、質的インタビュー調査を通して、中国・中国人に関する認識の形成・浸透のメカニズムを明らかにし、共通点や差異を探る研究作業に取り組んできた。最終年度では、これまでの研究を総括するとともに、収集してきたデータセットの分析作業を引き続き行いつつ、研究論文としてまとめる作業に集中的に取り組んだ。全期間を通して、先行研究のレビュー及び問題の現状の把握のために、各種の世論調査結果などを収集し、時系列及び相関・影響関係を解明する作業を行った。また、学術論文および世論調査の主題、内容、アプローチ、そしてキーワードへの分析を試みるメタ分析のアプローチを新たに加え、資料収集および分析作業を展開した。事例研究として、新聞メディアを中心に中国・中国人に関わる記事や論評を収集し、分析のためのデータセットを構築し、テレビドラマや映画などの映像メディアにおける「中国・中国人表象」を収集し、質的分析を行なった。調査対象の国・地域が、共通に抱えている問題・懸案、そして主要な政治・社会的なイシュー、そしてメディアのイベントなどに注目し、データ収集及び分析を行った。具体的な事例研究としては、中国の習近平体制のガバナンスに関するメディア報道、中国人観光客に関するメディア言説、そして朝鮮半島情勢に関わる中国の役割、中国の「一帯一路」プロジェクト、「新型コロナウィルス」のパンデミックに関わる中国報道などである。最後に、ソウル、台北の研究協力者と協力し、アンケート調査(ウェブで実施予定)及びインタビュー調査のための調査設計について協議を行い、調査設計を構築し、実施した。
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