本研究の目的は、ウガンダの農村において、食生活の現状と、世代間での食をめぐる知識の継承・教育がいかにおこなわれているのかを明らかにし、在来知と科学知を組み合わせた「食育」の方法を新たに示すことを目的とした。(1)食生活:食事調査と食品サンプルの栄養分析をおこない、科学的な観点から現状を把握する。(2)食料自給:各世帯に、食料自給や商品化の傾向の変化とその背景を聞き取る。(3)在来知・科学知の伝達:農作業、調理、食事、学校生活の場面で、食にかかわる在来知と科学知がどのように知識が伝達されるのかを把握する。 2022年度は、おもにウガンダにおける現地補足調査をおこなった。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年以来のウガンダ渡航であったため、カウンターパートとの関係再構築のための打ち合わせと、農村の状況変化の確認に注力した。そして、インフォーマントにインタビュー調査を実施した。 研究期間全体として、コロナウイルスの感染拡大によって食生活の詳細な調査は十分にできなかったが、その代わり、食育を考える上で基礎となる地域の食文化の多面的な知見を得ることができた。また、在来知と科学知の関係を探るため、現地の基幹作物であるバナナをめぐる知識や、人々が新しい品種をどのように受け入れる傾向があるのかについての議論を深めた。そして、近年ウガンダ政府が開発を進めている遺伝子組み換えバナナをめぐる農民の受容の問題をとりあげ、農村世帯のミクロな観点から考察した。具体的には、ポリティカルエコロジー論の先行研究をまとめるとともに、自身のこれまでの調査にもとづく知見の位置づけを明らかにした。
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