研究課題/領域番号 |
17K02054
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
橋本 行史 関西大学, 政策創造学部, 教授 (30319826)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地方創生 / 定常モデル / 総需要減退 / 人口減少 |
研究実績の概要 |
平成29年度は研究初年度として「定常モデル」の理論的な考察を実施した。経済学の古典において定常モデルがどのように位置づけされているかについてレビューを進めた。その一方で、未だ部分的な考察しか出来ていない段階ではあるが、地方創生の「定常モデル」についての考察を進めると、「定常」とは必ずしも静態的な状態を指すことでないことが理解される。地方の将来像としての「定常モデル」は決して地域内の成長を全く否定するのではない。その姿は成長する部分から衰退する部分を差し引くとゼロに近づくことを表すだけである。経済は生き物であり成長を止めると地方は壊疽してしまう。ただそれだけでは従来の成長モデルと変わらない。地方を支えてきた従来の地場産業や地域の中核産業が経済の構造変化によって流出・縮小する中で、その減少分をどのような方法で補うかの問題であると定義し直すことが可能である。すなわち「定常」は成長と衰退の関数と捉えることでもある。しかしながら具体的にどのような関数であるかはなお考察が必要である。さし当り地域の規模(人口、面積等)を一定において多様な小さな産業を育ててそれらを合わせて従来水準の経済規模を維持するモデル(産業ライフサイクルの継時更新)、地域の規模(人口、面積等)の減少に応じて経済自身を縮小していくモデルが考えられる。新たな産業集積モデルによる地域イノベーションを期待することは容易であるが楽観的で現実から遊離した考え方に陥いる危険がある。今後当該課題の理解を深化させるとともに、研究を次の段階に進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請時・研究開始時には予想外のことであったが、大学教員組合の委員長、および主要事業所の労働者過半数代表者に就任することになり、その用務に時間が取られて、当初予定した水準まで研究が進捗しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の30年度は、なお一部引続く用務もあるが、大半の用務からは解放されるためにより多くの時間を研究に当てることができる。当初の予定に戻って研究を推進するとともに、すでに掲載決定されているがDOIが取れていない論文が1件、原稿提出済みの論文が1件あり、それらを業績に加える予定である。さらに研究を進展させ、準備できたものから学会・研究会での口頭発表、論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には全く予想されなかったことであるが、大学教員組合の委員長及び労働基準法に定める労働者過半数代表者に選出されたために、学内の用務が繁忙で、申請研究のための資料収集に要する調査時間が十分確保できなかった。支出残の割合が多いのはそのためである。なお大学内、研究室内での研究は一定程度進めることができたので、予定していたレベルではないが論文や著書(編著)はある程度発行できた。次年度使用額については当初の予定に戻って執行を心掛け、研究の進展を図りたい。
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