研究最終年度は残された課題を遂行した。本研究期間全体の研究成果の概要を以下に総括する。まずこの間の状況変化を見るならば、研究当初から人口減少がさらに進む一方で、新型コロナウイルスCovi19 の影響もあって、衰退現象は続き、コロナ対策の交付金でかろうじて地域経済は維持されたと言える。非常事の発生によって、衰退現象の進行が一時停止したような状態と形容できよう。ただ事象の本質は変化することなく、維持されている。日本の置かれた状況が長期の衰退局面に入っていることは、グローバル化と人口減少によって、避けがたい事実として認識され始めている。その半面で、その後に迎える日本社会の定常状態への研究は進んでいない。本研究の意義は一歩先を見て、先に衰退期を迎えた地域の事例研究や各地の新しい取り組みの中から、今なお成長を目指した取り組みが続いている地域社会が今後直面する衰退が一巡した後の「定常モデル」を明らかにしようとしたものである。調査から得られた事実は、地域住民の意識の方向は、一定の経済的な充足を前提にして、コミュニティーの復活を望んでいることと、先が見通せなくなった生活環境の安定にあった。ただ、経済的充足の基準は、農村地域、都市近郊地域、都市部において生活形態の違いがあって、一律的な判断を慎む必要があった。明らかにされたことは、都市、都市近郊地域、農村地域でそれぞれに経済の衰退を受け入れつつ、生活基盤の補いの方法が見られた。コミュニティーの復活については、人口減少によって地域の担い手の絶対数が減少している関係から、まちづくり協議会、関係人口、ワーケーション等の新しい取り組みが進められているが、むしろ、足元にある明近代化当時の近隣関係を見直して、住民間の寄り合いや伝統行事の現代的な形での復活の必要性が認識された。
総需要減退下の地域再生の最終ゴールたる「定常モデル」の実証研究
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