本研究では、1945年から1972年までの米国統治時代の沖縄における、アメリカ政府関係機関制作映像の制作背景、流通、上映や受容について公文書を中心に調査をしてきた。また、映像を収集・分析し、これまでほとんど研究されてこなかった、アメリカが沖縄で行った映像メディアによる広報・文化政策に関して、総合的に研究することを目的とした。 新型コロナ禍を経て、米国立公文書館のルールが変わり、オンラインでフィルムの収集ができるようになり利便性は増した。しかし、一度に収取できる本数は以前の半分ほどになり収集できる本数は減ったが、できる範囲で収集を続けた。 最終年度は、公文書の調査に加え、当時民間で発行されていた雑誌なども調査し比べることで、米国民政府の政策を相対化して検討することを試みた。また、離島における文化・広報政策の実態を調査するため、先島以外で唯一文化施設が設置されていた座間味島や、沖縄本島とは異なった様相の見られる南北大東島でも調査を行った。 昨年度発見した映像にかかわる研究発表「起ちあがっていない琉球―沖縄ディアスポラ向けに制作された『起ちあがる琉球』(1953)」と、在沖米軍が制作に関わった映画に関する研究発表「反70年安保闘争米軍協力映画『ある兵士の賭け』(1970年)」を行った。 研究期間全体を通して、米国立公文書館、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館などで、米国民政府制作映像、公文書、その他関連文献を収集・調査することで研究を遂行することができた。また、関係者へのインタビューを行い、文献からは得ることのできない貴重な情報を得ることができた。研究成果は、国内外で、研究者だけでなく一般向けにも発表し、論文や書籍・DVD(『よみがえる 沖縄 米国施政権下のテレビ映像―琉球列島米国民政府(USCAR)の時代』)も出版することができた。
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