研究課題/領域番号 |
17K02061
|
研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
蒋 宏偉 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (50436573)
|
研究分担者 |
田中 樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 客員教授 (10231408)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 開発 / 土地利用 / 東アジア / 中国 / ラオス / 健康 |
研究実績の概要 |
平成30年度のフィールド調査は、当初予定の調査地中国海南省及びラオス中部サワナケート省において、現地調査を展開してきた。1、中国海南省調査地に関して、それぞれ開発程度、民族・文化背景の異なる4集落を対象とし、生業、生活、及び健康などの内容を含んだ質問票調査を実施した。質問票調査の一部集計の結果を踏まえ、一部の対象集落を再訪し、集落住民、政府関係者及び現地の共同研究者が参加するタウンミーティングを開催し、生活の満足度、生業・生活の問題点、健康問題について、グループディスカッションを行った。2、ラオス中部の対象地は、中国など外国企業の急速な進出によって、いわゆるアジア大開発の「フロンティア」地域なりつつある。現地住民が直面しているのは、急激な生業の市場経済化と健康の二重負担の問題(感染症と開発由来の環境汚染などによる健康問題)である。平成30年度では、このような問題を中心とし、対象集落住民の健康状況の把握(健康診断)、人口移動、土地利用(焼畑)及び生業に関わる質問票調査を実施した。 研究成果の解析及び発表において、30年度まで収集したデータを解析し、国際学会発表及び国際誌論文の投稿に努めてきた。29年度までラオス中部の集落に収集した住民生活行動データにおいて、特に注目してきたのは、対象集落の周辺環境より、集落成人住民日常活動空間、生業活動、エネルギー消費、感染症のリスク、男女差への影響に関する問題であった。現時点解明できたのは、生業活動の影響によって、男性の活動範囲は女性よりひろく、マラリアを感染するリスクを高めた可能性がある。一方では、近代的農具、農業用化学物質の導入によって、女性の身体活動レベルは低下し、各種の生活習慣病につながる可能性は現れた。これらの成果は、論文にまとめ、国際誌の論文に投稿したほか(査読中)、アメリカ地理学会などの国際学会にも受理され、口頭発表を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地の調査許可及び研究倫理審査ため、平成29年度の研究調査は、当初の予定より、やや遅れた。しかし、平成30年度以降、中国及びラオスの研究カウンターパートは、本研究の意義及び重要性を理解できるようになり、現場のサポート及び情報の共有において、積極的に行ってきた。以上の研究協力によって、ある程度平成29年度の遅れた研究調査を挽回できたと考えている。とはいえ、短い期間で、集落住民、現地の政府関係者及び研究者と共同で問題を発見し、共同で問題解決の糸口を探っていくのは、非常に大きなチャレンジともいえる。昨年度までの調査結果の整理分析を行い、平成30年度と同様に、着実に現地住民及びほかの関係者との情報共有するのは、今後さらなる展開において不可欠な研究作業である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和1年度において、昨年度の収集したデータを踏まえて、以下の活動中心で、研究を推進していく予定である。①補足データの収集:昨年度データ解析結果を踏まえ、必要に応じて、短期的なフィールド調査を実施し、補足データ収集を行う。②タウンミーティングの開催:データの解析を終え、現地の関係者に結果を共有し、タウンミーティングの企画・開催を行い、現在の生業、生活、健康における問題点の対策を探る。③研究成果の公表、昨年度と同様に、研究成果の解析に基づき、国内外学会の研究発表を行うと同時に、国際誌への論文投稿を積極的に行う。④人間活動空間評価するための解析手法の検討:ひきつづき、集落環境と住民日常活動の関係性について、データの解析を行うと同時に、人間活動空間評価するための各種指標の有効性と信頼性を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度ラオス及び中国で実施した質問票調査は、現地のカウンターパートの協力を得て、一部の調査出張を省く、一部の調査旅費を節約できた。節約できた旅費部分は、今年度で実施予定のタウンミーティングの開催費用、データ解析及び関係の調査旅費に支出する予定である。具体的に、平成29年度の事前準備によって、現地の共同関係者は、十分に議論を行い、質問票内容、調査手法の設計などを共同で実施した。そのうえ、平成30年度の現場での質問票調査において、双方は事前に綿密な調査計画をし、テレビ会議などによる情報交換は、現地の共同研究者のみによる質問票調査を実施しても、期待できる調査結果を得られと、判断した。その結果は、代表者らは、質問票調査に関係する一部のフィールド出張を省く、一部の経費の節約に寄与できた。また、双方は、これによって節約できた経費は、今年度の現場でのタウンミーティング、データ解析及びそれにかかわる出張など比較的に経費の必要なフィールド調査項目に支出する計画について、合意している。
|