本研究では、インドにおける都市スラム世帯の教育と貧困の関係を分析した。具体的には、2007~08年、2012年に実施した首都デリーのスラム世帯を2018年に再調査し、教育が貧困に与えた影響と貧困が次世代教育に与えた影響について分析した。 第1回調査の対象となった50スラム417世帯のうち、第2回調査(2012年)では46スラム297世帯、第3回調査(2018年)では44スラム212世帯を再調査できた。 第1回から第3回まで継続して追跡できた212世帯の実質所得、消費共に増加していたが、デリー全体との所得格差は拡大していた。親世代よりも暮らし向きがよくなったと感じている世帯主も減少した。スラム労働者の実質所得も10年間で微増したが、教育が所得に与える影響は低下した。ただし、若年層(29歳以下)に限ると、教育水準が上昇し、教育の所得への強い影響が観察された。また、義務教育世代の就学率はさらに上昇し、親の経済力が子供の学校選択に影響を与えるようになっている。 研究期間全体の成果としては、本のチャプター2章(日本語)、海外出版社の洋書2冊のチャプター(2章)、さらにジャーナルに投稿中の論文がある。
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