研究課題/領域番号 |
17K02069
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 重人 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60294013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 科学技術・医療・生命 / 生殖医学 / 妊孕力 / 卵子 / 疑似科学 / 知識 / マスメディア / 科学コミュニケーション |
研究実績の概要 |
1. 「卵子の老化」に関する資料を収集した。特に、前年度までの収集資料から漏れていた専門家・一般向け書籍を中心に購入している。 2. 前年度および今年度に収集した資料に基づいて、「卵子の老化」キャンペーンにおけるグラフ等の出典とその使われかた、世論や政策への影響について学会発表をおこなった。また、同キャンペーンとその影響についての概要をまとめた冊子 (英語版および日本語版) を作成・配布している。 3. 日本のいわゆる「少子化」に関する政策について、出生力の動向とそれに関する言説の変遷を調査し、「卵子の老化」言説が出現した背景を整理した。「少子化」ということばの初出は、これまで考えられていたより古く、1980年からの用例があること、また若年層への批判的な視線を当初からともなっていたことがわかった。また、2000年代には30代の出生が増え、晩婚化の実質的な効果が強調される方向に政治的な言説が変化してきており、このことが「卵子の老化」キャンペーンが受け入れられる条件を形成した可能性がある。 4. 統計データの信頼性に関する情報が隠されたままで政策立案に利用されていた事例のひとつとして、厚生労働省「労働時間等総合実態調査」についての文献収集をおこない、整理した結果を論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初に計画していた事柄については、予定どおり進めている。 想定していなかった新しい事態としては、2018年末以降に、厚生労働省「毎月勤労統計調査」のほか、政府統計の多くに不正あるいは誤りがみつかっている。本研究が対象とする「卵子の老化」パニックと同様に、政策立案に使われるデータの信頼性に疑問が持たれるケースであるが、この種の問題としてはこれまでになかった大規模なものであり、世論の関心も高い。比較対象として重要であるため、注視して情報収集をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には、これまで収集した資料を基に、専門家による「卵子の老化」関連の非科学的言説の生産・流通の実態と、政府によるいわゆる「少子化対策」における位置づけについて論文を執筆し、公表する。また、政府統計にみられる調査不正やデータ濫用についてもあわせて検討し、知識の生産・流通過程を非専門家が監視・評価するための方法論を考察する。
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