研究課題/領域番号 |
17K02070
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
辻上 奈美江 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (30584031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジェンダー / 湾岸アラブ諸国 / 女性 / 消費 / 起業 / 家父長制 / 国家資本主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、消費主義社会と化した湾岸アラブ諸国の女性の消費行動と、女性を対象とした商業活動の展開および女性の家計への経済的貢献を調べることでジェンダーの権力関係を明らかにしようとするものである。湾岸諸国では近年、女性の教育レベルと労働参加率の向上と連動して、女性が消費者として存在感を高めている。本研究を通じて男性が家族の扶養義務を負う、男性優位のイスラーム的価値観の解釈・実践の変化、および消費主義化を促進する国家の役割も同時に明らかにする。近代ジェンダー理論では、女性が消費と親和性が高いのは、女性が生産領域から排除されているからであるとも指摘されてきたが、本研究を通じて、湾岸諸国では、消費と生産領域とが連動し得ることが明らかになってきた。 令和元年度は、湾岸アラブ諸国の女性の消費・起業に関する現地調査(12月於サウジアラビア・アラブ首長国連邦、および2月於イギリス)を行うとともに、当該地域において消費を促進する国家資本主義体制について、ミシェル・フーコーの生政治などの理論に立ち戻って考察することができた。これをきっかけに、湾岸アラブ諸国における消費・起業について、より深くかつ立体的に議論を組み立て直す可能性がひらけてきた。他方で、新型コロナ感染症の世界的な拡大のため、当初3月に計画していたサウジアラビアおよびアラブ首長国連邦における現地調査は延期せざるを得なくなった。このため、令和2年度まで研究期間を延長することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和元年度は、湾岸アラブ諸国の女性の消費・起業に関する現地調査(12月於サウジアラビア・アラブ首長国連邦、および2月於イギリス)を行うとともに、当該地域において消費を促進する国家資本主義体制について、ミシェル・フーコーの生政治などの理論に立ち戻って考察することができた。湾岸アラブ諸国における消費・起業について、より深くかつ立体的に議論を組み立て直す重要な機会となった。他方で、当初、最終年度として想定されていた令和元年度には、本研究の総仕上げとしての研究成果の発表や、研究内容の再確認と今後の研究の発展のために現地調査を行う予定であったものの、新型コロナ感染症拡大のため、これらに若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の見込みが立たない中、現地調査の予定が立てられない状況ではあるが、この新たな局面において、湾岸アラブ諸国の女性の消費や起業活動に変化も見られることが明らかになってきた。世界的な経済活動の縮小局面における、いわゆる「巣篭もり消費」に対応したビジネスの拡大という現象が見られるようになったのである。今後の研究においては、これらの状況を盛り込んだ内容へと軌道修正することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的拡大のため、3月に実施予定にしていたサウジアラビアおよびアラブ首長国連邦における現地調査が実施できなくなったため。
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