研究課題/領域番号 |
17K02071
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
洪 賢秀 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (70313400)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東アジア / 出生前遺伝学的検査 / DNA鑑定 / ジェンダー / 生命倫理 |
研究実績の概要 |
今年度の研究目的は、韓国・台湾における妊娠・出産を経験した女性および男性を対象に、出生前遺伝学的検査に関する経験や認識を明らかにすることであった。まず、昨年度に行った先行研究を踏まえて、日本・韓国・台湾のアンケート調査用質問紙を作成し、日本調査は、2019年4月に実施することにした。 韓国と台湾における直近1年以内で妊娠・出産をした女性および男性(各国男女各50名)を対象に調査を実施した結果、以下のような特徴がみられた。 出生前検査は、韓国の回答者の94.9%が、台湾の回答者の68.3%が受検しており、韓国でより積極的に実施されていた。また、出生前検査を受検した理由としては、韓国では、「自ら必要であると思ったから」が58.5%と最も多く、「医師が勧めたから」が50%、「高齢出産だから」が31.9%、「配偶者が望んだから」が16.0%などの順であり、当事者が積極的に受検していることが見て取れた。台湾では、「医師が勧めたから」40.2%が最も多く、「高齢出産だから」が26.8%、「配偶者が望んだから」が12.2%などの順であった。韓・台ともに回答者は、NT検査、母体血清マーカー、NIPT、羊水検査、絨毛膜検査など、多様な出生前検査を複数受けていた。出産後、出生前検査に関して考え方の変化においては、韓国では71%の回答者が、台湾では68.3%の回答者がその必要性をより感じていた。その理由としは、韓・台ともに「高齢出産」、「NIPTの普及で簡単に受検できるから」、「身近な人が受検しているから」の順にあげられていた。 出生前検査への要望としては、韓国では「対象や条件を設けずに誰でも受けられるようにしてほしい」(73%)が、台湾では、「税や保険などの公的補助」(33.3%)が最も多かった。また、出生前検査は、「不安を解消するものである」韓国では91%が、台湾では95.9%の回答者が同意した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、東アジアにおける遺伝子関連検査(出生前検査及びDNA鑑定)の受容過程に着目し、出生前検査およびDNA鑑定の利活用実態を明らかにすることである。 今年度は、韓国および台湾における産後1年以内の女性とパートナーが産後1年以内である男性(男女各50名)を対象に、出生前検査に関する経験と認識についてアンケート調査を実施した。昨年度実施したステークホルダーのインタビュー調査結果をもとに日本語の調査票を作成した。日本・韓国・台湾における調査票を作成するにあたり、3カ国間の文化的背景の違い、出生前検査を受ける当事者という立場を鑑み、質問範囲や用語の使い方などについて、修正や調整を度重ねた。そのため、調査の実施時期が延期され、日本の調査は、2019年4月に実施することになった。韓国と台湾で実施した調査結果は、データを集計した。来年度実施する日本の調査結果と合わせて比較分析を行い、ジェンダー視点から抽出された諸課題を整理する予定である。 次に、昨年度実施した各国におけるDNA鑑定を実施している会社のリストに加えて、ステークホルダーへのインタビューガイドを作成した。個人インタビューは、来年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の研究は、次の2つの研究調査を実施する予定である。 ①出生前遺伝学的検査サービスの提供・利用における実態調査 今年度、韓国および台湾の直近1年以内で妊娠・出産をした女性および男性を対象に実施したアンケート調査に加えて、日本で同様の調査を実施する。各社会における出生前遺伝学的検査のサービス利用、検査への不安・要望、遺伝子関連検査に関する認識などについてデータを整理し、ジェンダー的視点から比較分析を行う。また、日本・韓国・台湾において出生前遺伝学的検査サービスの提供する側を対象に追加インタビューを実施する。 ②DNA鑑定のサービス提供・利用における実態調査 先行研究を踏まえて、トラブル事例や判例などについて整理する。また、DNA鑑定のサービス提供側へのインタビューガイドおよび質問票を作成する。日本・韓国・台湾におけるDNA鑑定のサービス提供側を対象に、提供実態などについてインタビュー調査を実施する。各国における社会的課題を抽出する。これらの調査結果をもとに総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 日本で出生前遺伝学的検査に関するアンケート調査を実施するための費用が必要になった。また、アメリカで開催されるSociety for Social Studies of Science (4S)において学会発表を予定しており、旅費等が必要になった。 (使用計画) 4月に日本で出生前遺伝学的検査に関するアンケートの実施のために使用予定である。また、9月にアメリカでの国際学会で発表するための旅費等で使用する予定である。
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