本研究の目的は、東アジアにおける遺伝子関連検査の受容過程に着目して、出生前遺伝学的検査の利活用の実態を把握するとともに、文化的・社会的諸課題を抽出することであった。特に、どのような社会的文脈や人間関係においてこれらの技術が受容されていくのか、遺伝子関連検査のサービスの提供側、サービスを受ける側、制作側に分け、ジェンダー的視点で分析を行った。 これまでのサービス提供側や政策側のインタビューに加えて、本年度は出生前遺伝学的検査サービスの利用における現状を明らかにするために、ウェブ調査を実施し分析を行った。日本・韓国・台湾の首都圏に在住する者で、1年以内に妊産・出産の経験のある者およびパートナーが同様の経験のある者(日本300名、韓国100名、台湾120名)を調査対象とした。分析方法は、単純集計、二変量解析、男女別集計を行い、日本・韓国・台湾の比較分析を行った。 調査結果、出生前遺伝学的検査の結果によっては、妊娠継続に関して日本は韓国や台湾よりも慎重な態度を見せていた。また、出生前遺伝学的検査の意味について、3カ国ともに「人生の選択」と「不安への解消」という認識をもっていた。新技術のさらなる応用については、韓国と台湾は、特定の病気を避けるために胎児とゲノム編集に関するすべての情報を積極的に知りたいという態度を見せているのに対して、日本はゲノム編集についてより慎重な態度を見せていた。出生前遺伝学的結果に関する不安については、多くの回答者は、不安である理由を「何をすべきかわからない」と回答し、多くの日本の回答者は、人生の選択をコントロールすることに罪悪感を抱いていたことが明らかになった。
|