本研究はベトナムの観光産業についてジェンダー視点から分析することを課題としている。研究助成期間中に新型コロナ感染症の世界的な拡大によって、この間、現地調査がままならず研究期間を延長する中でも同様の状況が続いた。研究課題を進めるにあたり、これまでに引き続いて関連文献を読み進め、過去に実施したベトナム現地でのインタビュー調査記録(行政関係、旅行会社、ホテル・マネージャー、研究者等)の読み直しなどを進めた。他方で、コロナ禍の観光産業の動向やその影響についても考察に含めるよう努めた。 コロナ禍での研究実施の難しさは昨年度と似たような状況であり、また対面授業が再開する中で感染予防を同時に進めていく必要もあった。最終年度では、観光関連の現地従業員にさらなるインタビュー調査を実施して、十分な調査記録をもとにまとめたいところであったが現地調査は行えなかった。 こうしたことから、昨年度に続き、本研究課題に役立ち、また比較分析の可能性をもつようにと、国内の観光産業の全般的な動向やコロナ禍における同産業へのインパクトを含めて情報収集をして観光産業の動向を少しでも把握するよう努めた。その作業では、複数の領域にまたがる観光産業の特徴やこの間の統計データからの把握、労働条件の特徴を再度確認できた。国内の宿泊業については、昨年度に知りえた経営戦略上の課題やサービス戦略に関する動向を踏まえつつ、インタビューを実施してコロナ禍の現状についての知見を得た。現在、すでに作成した研究枠組を参照しながら、宿泊業を中心として働き方の変化、サービスの質、労働運動の活動・対応に着目しながら分析し、取りまとめ作業を行っている。成果発表にはもう少し時間を要する状況である。
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